残丘
残丘(ざんきゅう)は、断層運動や浸食によって、周囲から取り残され孤立した丘のこと。緩やかな準平原の中に存在する。累層が順序良く重なる地帯では、地形輪廻のような浸食を受けても、取り分けて目立った残丘は発生しにくい。逆に、断層運動などの地殻変動で累層が切断されたり折り曲げられたりした地帯では、場所によって浸食の度合いが異なるために残丘が発生しやすい。写真のパァォン・ジ・アスーカール(Pão de Açúcar: 英語の名前はSugar Loaf)山は花崗質の鉱物組成を持つ眼球片麻岩で出来ており、海抜396m。
呼称
北米ではモナドノック(英:monadnock)ともいう。これは、ニューハンプシャー州南部にあるモナドノック山(Mount Monadnock)から採られ、地質学者の間で用いられるようになった言葉である[1]。モナドノック山自体は、アベナキ族(Abenaki)の言葉で(頂部が)平坦な山を意味する"menonadenak"あるいは孤立した山を意味する"menadena"から名づけられた[2]。
また、世界的にはインセルバーグ(独:inselberg、インゼルベルク)と呼ぶことが多い。これは「島状の山(島のような形状をした山)」を意味し、アフリカ南部で同様の地形を多数発見したことを受けて、ウィルヘルム・ボルンハルト(Wilhelm Bornhardt)が1900年に提唱した[3]。ただし、インセルバーグは乾燥帯において顕著な地形を指して名付けられたものであり、モナドノックとは定義が少し異なる。1972年には「なだらかな傾斜をもった周囲の地形から飛び出した、急な斜面をもつ丘」と定義され、ビュートを含む。[4]。
アフリカの南部や中部では、これらと同じような形状の花崗岩の丘をコピエ(蘭:kopje)と呼ぶ。これはもともと、アフリカーンス語の"koppie"に由来する[5]。
堅牢残丘
地層を構成する岩石類の性質に地域差があり、柔らかく浸食されやすい石灰岩などからなる周囲地形に対して、花崗岩などの浸食されにくいところが残って小高い丘となったもの。こうして形成された残丘を堅牢残丘(けんろうざんきゅう)という。
遠隔残丘
分水界にある地点は、河川や氷河の浸食作用を受けにくく、年月を経て周囲の浸食が進んでも高いまま取り残される。こうして形成された残丘を遠隔残丘(えんかくざんきゅう)という。
残丘の例
ウルルやカタ・ジュタ(オーストラリア)、早池峰山(岩手県)、筑波山(茨城県)、讃岐富士(香川県)などは大規模な堅牢残丘である。
出典
脚注
- ^ Raymo, Chet and Maureen E. (1989) Written in Stone: A Geologic History of the Northeastern United States. Globe Pequot, Chester, Connecticut.
- ^ "Vermont Soils with Names of American Indian Origin" United States Department of Agriculture, Natural Resources Conservation Service. Retrieved January 6, 2008.
- ^ Holmes, Arthur (1978). Holmes Principles of Physical Geology Taylor & Francis: New York.
- ^ Gerrard, John (1988). Rocks and Landforms Routledge: Florence, Kentucky.
- ^ Webster's New Explorer Dictionary of Word Origins (2004). Federal Street Press: New York.
関連項目
- メサ・ビュート
- ケスタ
- en:List of inselbergs(インセルバーグの一覧:英語版)