価格
価格(かかく、英: Price)とは、有形・無形の各種の商品(サービスを含む)の取引に際して提示される金額をいう。基本的には需要と供給のバランスによって決定される。値段(ねだん)とも呼ばれ、サービスについては料金(りょうきん)ということもある。
価格の種類
価格は、基本的に商品の需要と供給によって決まる物であるが、価格に決定の仕方によっていくつかの種類がある。
消費者の購買心理に関する価格
- 心理的価格
- 消費者は特定の商品において一定の価格の範囲内であれば、あまり価格の上下を気にせず購入する価格帯のこと。
- 習慣価格
- 特定の商品に対して消費者が習慣的に認めている価格のこと。自動販売機における飲料などが含まれる。
- 端数価格
- 値段を「198円」のように端数にすることによって、価格を下げたという印象を消費者に与える価格。日本では一般に「8」や「9」という端数が多く用いられることからイチキュッパともいわれている。
- 名声価格
- バッグや時計など主に奢侈品(ぜいたく品、高級品)に用いられることが多い価格。高価格のほうが品質がいいと判断されることが多いためあえて高価格に設定されている。
相対価格と一般物価
経済学者のクヌート・ヴィクセルは、名目価格(一般物価)の変動が、相対価格の変動とは根本的に異質な現象であることを発見した[2]。
ミクロ経済学におけるP(価格)とマクロ経済学におけるP(物価)は、前者は財の相対価格(個別価格)を表すものであるのに対し、後者は単に物価水準を表しており、根本的に別の概念である。
つまり、「ハンバーガーが値下がりした」という場合でも、牛丼などその他のモノの価格はほぼ変わらず物価水準が変化していない場合、ミクロ経済学的な(たとえば牛丼などとの)相対価格の変化を表しているが、マクロ経済学的な一般物価(総合物価)の変化である「デフレーション」ということは表していない。
物価の上下は純粋に貨幣的な問題であるので、ミクロ経済学における財市場とは何の関係もない。
価格と物価には次のような違いがある。
- 価格
- 価格は、購入される個々の財貨・サービスなど1単位に支払われる貨幣の量のことを指す。広義には、賃金、利子率、為替レート、地代も含まれる。
- 物価
- 物価とは、一定の範囲(工業製品、消費財、小売商品等)に属する数多くの商品の価格の状態を、他の時点での価格と比較して総合的に表したものである。通常は物価指数として示される。概念的には貨幣の価値が変化することによってのみ変動する。
価格と効用
ある財が希少性(使いたい量に比べて使える量の少ないこと)を有しているとき、それに見合っただけの価格を、その財は有することになる(希少性のない自由財は価格をもたない)。とはいえ、ある財の価格が、全ての人にとってそれに見合っただけの効用(主観的な満足)を示していると考えることはできない。たとえばダイヤモンドと水を比べた場合、前者は希少であり価格が高いが、しかし効用はありふれた後者のほうが高いことがある。このことを、アダム・スミスに由来する価値のパラドックスという。
経済学者のスティーヴン・ランズバーグは「価格低下によって消費者が得た利益は、生産者の同額の損失によって相殺される。消費者と生産者の双方の利益を勘定に入れれば、価格下落自体はは費用と便益の関係に影響を与えない。しかし、喜ぶ消費者が増えるという事実は、一般に社会的利益であり、便益として計上するべきである。政策分析の重要な仕事は、消費量の増加から生じる消費者余剰の増加分を推計することである」と指摘している[3]。
脚注
- ^ デジタル大辞泉・大辞林(第三版)『生産者価格』 - コトバンク
- ^ 日本経済新聞社編 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、35頁。
- ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、161頁。