ザ・ボス
ザ・ボス(THE BOSS、1922年 - 1964年)は、コナミ(現、コナミデジタルエンタテインメント)のアクションゲーム、メタルギアシリーズに登場する架空の人物。容姿のモデルはシャーロット・ランプリング。声優は井上喜久子。海外版ではロリー・アランが演じている。
人物
コブラ部隊元隊長の女性。イギリス系アメリカ人。本名は不明。
戦うことに喜びを感じており、大戦時のコードネームは無上の歓喜を表す「ザ・ジョイ(THE JOY)」。後に伝説の傭兵「ビッグ・ボス」として世界に名を轟かすことになるジョン(ネイキッド・スネーク)の師であり、リボルバー・オセロットの母親でもある。
スネークに対しては師匠と弟子という関係からか、ヴァーチャスミッション時にスネークが何度も敵兵に見つかったり、いつまでも迷彩服を着用しなかったり、タキシードなどを着用したりすると、「この5年の間、あなたは一体、何をしてきたの?!」などと厳しく叱咤される。余談ではあるが、スネークの喫煙にはパラメディック同様快く思っておらず、喫煙を止めるようアドバイスをするが、彼女自身も喫煙者である[1]。
胸から腹部にかけてS字状の大きな傷を縫合した痕がある。これはアダムスカを帝王切開によって出産した際、ノルマンディー上陸作戦の真っ只中であったため、処置も設備も整わない野戦病院での出産を余儀なくされたためである。その痕は彼女が死んだ直後一匹の蛇に姿を変え、花畑の中に消えていった。
- 夫:ザ・ソロー
- 長子:リボルバー・オセロット
来歴・関わった事件
軍への貢献
第二次世界大戦中の1942年に、連合軍内に特殊部隊「コブラ部隊」を設立し、連合軍を勝利に導いた。その功績により後に「特殊部隊の母」や「戦士(Воевода)」の異名を持つ。ヘリオポリスの侵入演習やアフリカのドイツ空軍基地夜間襲撃を考案し、SASの前身であるレイフォース、L分遣隊の基礎を築いた。SASの創立時に特別顧問として招かれ、デイビット・オウ(後のゼロ少佐)と共に第22SAS連隊の立ち上げに関わる。
1944年のノルマンディー上陸作戦中にザ・ソローとの間にアダムスカ[3]を出産するが、賢者達によって拉致される。大戦後の1947年にコブラ部隊を解散し、1951年、ネヴァダエリア7で核実験「バスター・ジャングル作戦」に参加し放射能を大量に浴びて白血病になる。この頃にジョン[4]が弟子入りし、ともに近接格闘術「CQC」を生み出すが[5]、1959年にジョンの前から忽然と姿を消す。米ソによる宇宙開発競争が激化する中でソ連の開発状況を調査し、妨害せよと大統領命令を受けた。CIAはボスを援助せず開発局にボスは単独潜入、工作員を潜り込ませることに成功。作戦を引き継ぎ成果を横取りしたCIAが工作員の報酬を中抜きしていたため、工作員はソ連側に寝返り、アメリカに虚偽の報告を行っていた。
1957年、高高度降下低高度開傘の研究へ貢献した事を買われ、特殊部隊訓練グループ(現在の第1特殊戦訓練グループ)[6]の第2大隊B中隊に教官として招かれている(表の記録には残らず)。
1961年、当時の宇宙線遮断技術が充分に発達しておらず、乗員の被曝は避けられなかったため、前年の失敗での責任を転嫁された彼女が「マーキュリー計画」の非公式の被験体に選ばれる。NASAで彼女の献策が承認され、マーキュリー7と同格の宇宙飛行士「オリジナル・レディ」と呼ばれるようになる。マーキュリー・レッドストーン2号回収後、ソ連のように「窓」をつけた宇宙船で有人飛行するという難題を課され、ボストーク1号と同じ日に出発・マーキュリー7を差し置き米人初の有人飛行となる。大気圏突入時に窓のせいで予定軌道をずれて着水時にロケットが大破するも帰還、半年間昏睡状態に陥る。ボストーク1号の成果の方が優秀でガガーリンの体験談もありザ・ボスの存在は歴史の記録から削除された。宇宙開発同年のピッグス湾事件にて戦闘に参加し、航空支援が取り消され自らの部隊は壊滅したと語っていたが、『メタルギアソリッド ピースウォーカー』において59年の工作活動を引き継いだCIAが工作の失敗を表に出さないための欺瞞であったことが判明[7]。
1962年、ソ連に再び渡る。ツェリノヤルスクにおいてかつての戦友であり、開発局の工作員を雇い二重スパイにしたザ・ソローと敵同士として再会し、ザ・ソローはザ・ボスに任務を遂行させるために、自らの殺害を嘆願。やむを得ず彼女はザ・ソローを射殺する。
ヴァーチャスミッション
- 『メタルギアソリッド3』(2004年発売)
1964年8月24日。ジョンと共に10年間過ごし、戦闘技術を教授した師匠として登場。ミッション時にはパーミット級原子力潜水艦内から無線にて参加するが、実際はスネークと同じくツェリノヤルスクに潜入していた。オリーブドラブの戦闘服にバンダナを着けている[8]。
彼女の本来の目的は、GRUに属するヴォルギン大佐の持つ「賢者の遺産」を奪取し、その膨大な資金の全額をアメリカ側に誘導することで、CIAの指示でソ連へ偽装亡命した。この際、亡命の手土産として小型核砲弾を2発持ち込んだが、それが後に災いとなる。ヴォルギンはMi-24Aから用済みとなった開発局「OKB-754」(通称「ソコロフ設計局」)に向けデイビークロケットを発射し、設計局及び周辺地域を破壊、放射能汚染させた。
後の情報操作により、このソ連国内で核兵器を使用するという凶行は、ザ・ボスが行ったとされた。これを受け、ソ連政府は第二戦備態勢に突入する。
スネークイーター作戦
- 『メタルギアソリッド3』(2004年発売)
1964年8月30日。CIAは、ヴァーチャスミッションでのヴォルギンの凶行にアメリカ政府が関わっていないことをソ連側に証明すべく、ザ・ボスの抹殺を目的とした「スネークイーター作戦」を開始する。
当時のソ連製最新式であった白いスニーキングスーツを着用。携行銃としてXM16E1の銃身を短縮し、100連装のドラムマガジンを装備している[9]、「パトリオット」を所持している。シギント曰く、「世界に二つとないオリジナル」とのこと。銃身が極度に短い為、反動が尋常ではないが彼女はこれを片手で扱う。
この作戦での彼女の任務はアメリカ(スネーク)に賢者の遺産を奪取され、抹殺されることであった。ロコヴォイ・ビエレッグの花畑でスネークに敗れ、愛銃パトリオットと賢者の遺産に関するマイクロフィルムを託し、スネークによって人生の幕を閉じた。この時、スネークに語った「世界は一つになるべきだ」という意志は、ビッグ・ボスやゼロによって歪んだ形で引き継がれ、「愛国者達」を創設する行動理念となっていく。
最後の対決でスネークが仮死薬を使用しても死を偽装している事をすぐに見破って文字通り叩き起こす他にも、自身がCQCの達人であるためかスネークが繰り出すCQCの一瞬の隙を利用し逆にCQCで返り討ちにすることがある。
ピースウォーカー事件
- 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』(2010年発売)
1974年。直接登場していないが、作中のAI兵器「ピースウォーカー」の思考がザ・ボスを模して作られている。
ザ・ボスのマーキュリー計画参加が決定した時期に知り合ったストレンジラブ博士が彼女に心酔し、彼女の意思に沿うママルポッドの研究に至った。AIの思考パターンがザ・ボスをモデルとしているためか、研究過程でプログラム外の思考を行うなど奇妙な現象が見られた。物語終盤では意図的に発信された「ソ連からの米本土核攻撃」という偽装データを受信し、ザドルノフの根回しによってキューバへ核報復を実行しようとするが、スネークによって阻まれる。
幾度となく再起動を繰り返したピースウォーカーだったが、最終的には自らの機体をニカラグア湖に沈め、機能停止を実行するという想定外の行動をとった。その際にはママルポッドから「シング」が流れ、「平和が叶わない幻想だからこそ祈り続ける」という意志をスネークらに悟らせ、果てた。
また、ピースウォーカー撃破後、EVAからザ・ボスについての資料テープが獲得できる。
THE PHANTOM PAIN
- 『メタルギアソリッドV ファントムペイン』(2015年発売)
1984年。ピースウォーカー事件において水没して機能を停止させたAIポッド(ママルポッドの機能を引き継いだレプタイルポッド)だが、ストレンジラブによってニカラグア湖から回収されていた。完全な故障を免れていたようで、のちにダイヤモンド・ドッグズに回収され保管される。
その後
- 『メタルギアソリッド4』(2008年発売)
2014年。「ザ・ボスの抹殺」という任務は、『メタルギアソリッド3』では偽装亡命の潔白を証明するために発案されたと説明されていたが、『メタルギアソリッド4』では「カリスマ性を危惧したCIAによって抹殺された」という事実がビッグ・ママの口から語られている。
彼女の死後、愛国者達が誕生するまで表の世界史には、ソ連では「亡命しておきながら、ツェリノヤルスクを核で汚した凶人」、アメリカでは「国を裏切った売国奴」と記録されたが、裏の史実には祖国のために命も名誉も棄てた自己犠牲的な精神から、「真の愛国者」と記されていた。
遺体は埋葬されず花畑に放置されたままで、無縁墓地の彼女の墓標には名前が刻まれず「IN MEMORY OF PATRIOT(愛国者の記憶に)」と刻まれている。スネークイーター作戦の後にビッグ・ボスが供えたオオアマナ(花畑に咲いていた花)は、半世紀後の2014年には墓地全体に広がっていた。
備考
- ザ・ボスがジョンを弟子として引き取ったのは、1964年から逆算すると1949年になる[10]が、この時点では彼女もジョンも被曝していないという矛盾が生じている。
- 前述したように、彼女はSASの創設に関わってはいるが、ゼロと創設したのはその中の一部隊でありSAS自体を創立したのは彼女ではない(ちなみに、実際に創設したのはイギリス陸軍少佐のデビッド・スターリングである)。
- 1964年では特殊部隊の母とまで云われた彼女だが、後世には一部の人間のみ知るに留まっており、ソリッド・スネークがビッグ・ママから彼女の事を知るまでその存在・事件を知らない事から、功績・汚名と共に後世には記録が伝わっていない可能性が高い。
- 他のコブラ部隊の隊員達が自らの最期を自爆で迎えたのと異なり、ザ・ソロー同様に自爆による隠滅を行っていないが、本編との関与がないシークレットシアターではオチとして爆発する描写が存在する。
脚注
- ^ 葉巻を装備した状態で彼女に無線を送ると、スネークがそのことに言及するが「私はいいのよ」と突っぱねている。
- ^ MGS3の彼女の墓碑には192Xと刻まれている。
- ^ 後のリボルバー・オセロット。
- ^ ネイキッド・スネーク、後のビッグ・ボス。
- ^ 実際のCQCはイギリスのフェアバーンにより中国武術、CQBなどを基に考案された。フェアバーン・システムも参照。
- ^ ゲーム内での無線では「1957年にフォートブラッグのJFK特殊作戦センターに陸軍最初のHALO学校が設立」と言われているが、特殊部隊訓練グループがジョン・F・ケネディ軍事援助センターの麾下に入ったのは1968年なのでこれは開発スタッフの間違い。
- ^ ただし、ピッグス湾事件において予定されていた米空軍による爆撃がケネディ大統領によって中止され、亡命キューバ人部隊が壊滅したのは事実である。
- ^ このバンダナはミッションの失敗時にスネークに受け継がれるが、10年後のピースウォーカー事件の際にスネークがザ・ボスとの決別の意を示すためニカラグア湖に投げ捨てている。さらに9年後にはビッグ・ボスのファントムがそれを受け継いでいる。
- ^ マガジン内部の給弾機構が∞の形をしているため弾切れしない。
- ^ 『MGS3』冒頭のジョンの「5年と72日18時間ぶりだ」というセリフから、ザ・ボスと過ごした期間10年と足すと15年前となり矛盾する。