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バージェン航空301便墜落事故

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バージェン航空301便
1995年に撮影された事故機(TC-GEN)
この翌年、当機は墜落に至る
出来事の概要
日付 1996年2月6日
概要 ピトー管の閉塞による対気速度計異常
現場 ドミニカ共和国の旗 ドミニカ共和国近くの大西洋
乗客数 176
乗員数 13
負傷者数 0
死者数 189
生存者数 0
機種 ボーイング757-255
運用者 トルコの旗 バージェン航空
機体記号 TC-GEN
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バージェン航空301便墜落事故(バージェンこうくう301びんついらくじこ)とは、1996年2月6日に起きた航空事故である。ボーイング757型機で最初の事故であり、同機の事故では最悪の死者数である。機体はバージェン航空所有だが、実際に運航したのはアラス・ナショナル航空だったため、アラス・ナショナル航空301便墜落事故とも呼ばれる。

事故当日の301便

墜落まで

この日、301便の前便のドミニカ共和国プエルト・プラタからドイツフランクフルトに向かう機体が故障したため、トルコ航空会社バージェン航空ボーイング757型機(機体番号TC-GEN)が代わりに乗員13人・乗客176人の計189人を乗せてグレゴリオルペロン国際空港からフランクフルトに向かって4時間遅れで離陸しようとした(フライト予定時間は9時間)。

小雨の降る中を離陸滑走中に奇妙なことが起きた。副操縦士側の速度計は80ノットに達していたが、機長側の速度計は僅か30ノットを示していた。機長は異常を認識したが、副操縦士に速度を読み上げてもらい、離陸を続行して23時42分に離陸した。離陸後は機長の速度計も動き始めたが、まだ値は一致していなかった。

しかし、機長は空港に戻ろうとはせず、離陸後約1分30秒後にオートパイロットを作動させた。オートパイロット作動直後にオーバースピードの警報が作動した。機長は副操縦士に減速を指示したが、そのとき機長側の速度計は260ノットを示し、副操縦士側の速度計は通常の値である220ノットを示していた。

この異常事態を知らない管制官は、301便に上昇を指示した。その時に至っても、副操縦士側の速度計は200ノットを示していたが、機長側の速度計は320ノットを示しており、全く一致していなかった。しばらくすると警報は停止したが、また警報が作動し757型機がこの高度で飛べる上限の速度である350ノットに近づいていると報告した。

機長はシステムをリセットして警報を止めたが、とうとう速度計は352ノットになり、危険だと判断した機長は機体の速度を落とそうとスロットルを絞った。その瞬間301便の機首が急激に上がって失速状態に陥り、スティックシェイカーが作動した。失速した機体は大きく右に傾き落下し始めた。そして今度は機首がまた上がり、ほとんどコントロール不能に陥った。機首が上がりすぎているために、エンジン推力を上げてもエンジンが空気を十分に吸う事ができず、左エンジンが反応しなくなった。そのため左に危険なほど傾き、左主翼を軸に回転し海に向かって自由落下した。

301便は海面にほぼ垂直に激突し大破した。乗員乗客189人全員が死亡した。

事故原因

301便の慰霊碑

パイロットのミスにより墜落につながった可能性が高いとされている。対気速度計の異常は機長側のみであり、機長が対気速度計の異常に気づいたにもかかわらず離陸を続行したこと、両方の速度計が壊れていると思い込んだこと、さらには副操縦士もベテランの機長に遠慮して操縦桿を手に取ろうとしなかった事が挙げられている。

オートパイロットは機長側の故障した速度計のデータを参照していたため、速度が速すぎると判断し限界近くまでトリムアップしていた。そのため操縦桿を引いていなくとも機首が上がった状態になっていた。また、速度超過警報に従ってスロットルを絞ったにもかかわらず失速したため、機長はほとんどパニック状態になっており、ずっと操縦桿を引き続けていた。CVRには墜落直前、「何がどうなってる!!」という機長の叫び声が残っていた。

対気速度計の異常については、速度を計測するピトー管が何らかの原因で塞がれていたためと結論付けられた。機体は海上で墜落したため、ピトー管は結局発見できず、その原因は分かっていない。しかし、事故機は事故の前に25日間も飛行せずに駐機されており、長期間駐機する場合に取り付けるはずのピトー管カバーを整備士が付け忘れていた。そのため何らかの生物(特に現地に生息しているの一種であるドロバチ)がピトー管内部に巣を作り詰まらせてしまったのではないかと見られている。

この種の事故は非常に危険で、同年の10月に起きたアエロペルー603便墜落事故では、やはり同様にピトー管の異常により盲目飛行に陥ったボーイング757が30分間不安定な飛行を続けた後、リマ空港近辺の海上に墜落している。この時の事故原因は、洗浄作業のためにピトー管に取り付けられていたマスキングテープの剝がし忘れであった。

映像化

関連項目

外部リンク