デルタ線
デルタ線(デルタせん)は、三角線(さんかくせん)とも言い、三角形状に敷設された鉄道線路の配線のことで[要検証 ]、転車台(ターンテーブル)の代わりに、各頂点の分岐の先で折り返して機関車などの車両や、特に、転車台と違い車両単位ではなく列車の編成ごと向きを変えることができる。また、3方向からの路線が集まる地点をこの配線とした場合、列車の進行方向を変えずにどの方向からどの方向へも直通できる[1]。日本ではギリシャ文字のデルタ(Δ)に形が似ていることから付けられた名前で、英語ではワイ(wye)という。
デルタ線の利用例
日本の場合、東海道本線を中心に1950年代頃まで運行されていた特別急行列車「つばめ」・「はと」は、上下列車とも編成の最後尾に展望車を配する必要や、また三等車スハ44形の2人がけ座席が一方向き固定式であることから、東京・品川、大阪の双方において、全編成を方向転換させるという方法を採った。このような方向転換方法は三角線回し(さんかくせんまわし)と呼ばれている。なお、このような編成の方向転換については、電車列車の場合でもまれに行われることがあり、京浜東北線に投入されているE233系電車を試運転後、浦和電車区に搬入する際に山手貨物線 - 大崎駅 - 品川駅 - 東京経由としたため、京浜東北線では向きが逆になってしまうことから事前に武蔵野線を利用して方向転換が行われた。また、1997年に上野駅停車時の騒音源を離すため「北斗星」・「あけぼの」等の荷物・電源車の向きを逆転させるために、同じく武蔵野線及び青森駅構内を利用してこのようにして全ての使用編成の方向転換を行ったことがある。大手私鉄では近鉄が奈良線系統の車両を大阪線系統や名古屋線系統に異動する際に車両編成の向きを合わせるため(奈良線系統と大阪線・名古屋線系統の車両では編成中でパンタグラフの付いている位置関係が逆になっているため)や一部特急車での編成の向きを変えるために伊勢中川駅の短絡線と駅構内で方向転換を行う場合がある。
また、蒸気機関車も車両の進行方向によって前後が決まっているため、進行したい方向によって、車両全体の向きを転換する必要がある。通常はターンテーブルが用いられる。しかし、ターンテーブルを設置せずにデルタ線を使用して、方向転換する事もあった。敷地が確保できる場合、ターンテーブルよりデルタ線の方がコスト的に安いためか、軽便鉄道等に多く見られた(曲率の制限の関係もある)。数は少ないが、国鉄にも蒸気機関車の方向転換を目的としたデルタ線が北海道や樺太にかつて存在していた。
日本国内では路線の分岐の数に比してデルタ線の数は多くない。一方で世界のほとんどの国では路線の分岐する所はデルタ線が設けられているところが多く、日本が手がけた韓国の鉄道においても多くのデルタ線が敷設されている。
デルタ線の例 | |
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京葉線二俣新町駅付近模式図 |
日本のデルタ線一覧
現存するデルタ線
- JR東日本
- 品川駅 - 山手貨物線 - 大崎駅 - 大崎支線・品鶴線 - 新鶴見信号場 - 品鶴線 - 品川駅
- 上野駅 - 東北本線 - 川口駅 - 東北貨物線・常磐線 - 三河島駅 - 常磐線 - 上野駅
- 立川駅 - 南武線 - 府中本町駅 - 武蔵野線 - 新小平駅 - 武蔵野線・中央本線 - 立川駅
- 大宮操車場 - 東北本線・武蔵野線 - 西浦和駅 - 武蔵野線 - 武蔵浦和駅 - 武蔵野線・東北本線 - 大宮操車場
- 南流山駅 - 武蔵野線 - 北柏駅 - 常磐線 - 馬橋駅 - 武蔵野線 - 南流山駅
- 西船橋駅 - 京葉線 - 新木場駅 - 京葉線 - 南船橋駅 - 京葉線 - 西船橋駅(上記図を参照)
- 信越本線越後石山駅 - 信越本線・白新線上沼垂信号場 - 白新線東新潟駅
- 塩尻駅 篠ノ井線と中央東・西線の短絡線
- JR東日本・青い森鉄道
- JR西日本
- JR四国
- 西武鉄道
- 名古屋鉄道
- 近畿日本鉄道
- 東京都交通局(東京都電)
- 荒川車庫前停留場車庫構内出入庫線
- 多摩都市モノレール
- 多摩都市モノレール線車両基地出入庫線(高松駅北側。ただし、双方の線が向き合う方向で合流するため、方向転換はできない)
- 広島電鉄
- 広島高速交通
- 伊予鉄道
- 土佐電気鉄道
- 長崎電気軌道
- 鹿児島市交通局
- 富山地方鉄道
- 富山軌道線 富山駅 - 電鉄富山駅・エスタ前停留場 - 新富町停留場…ただし、電鉄富山駅・エスタ前停留場-新富町停留場間を通過する列車は2016年3月26日のダイヤ改正で消滅し、全便が富山駅停留場経由となった。そのため、電鉄富山駅・エスタ前停留場-新富町停留場間の線路は休止状態となっている。
廃止されたデルタ線
※路面電車は実例が多いため割愛。
- 官営幌内鉄道(現北海道旅客鉄道函館本線)
- 官営幌内鉄道(のち北海道旅客鉄道幌内線)
- 幌内太駅(のち三笠駅)
- JR東海・名古屋鉄道
- JR西日本(国鉄時代含む)
- 城東貨物線・淀川貨物線巽信号場
- 関西本線久宝寺駅 - 平野駅 - おおさか東線正覚寺信号場
- (貨)梅田駅の廃止により、百済駅発着列車が増加するため、関西本線と城東貨物線の線路が分離された。このため現在は完全なデルタ線ではない。
- 関西本線久宝寺駅 - 天王寺駅 - 阪和線杉本町駅
- 紀勢本線・和歌山線紀和駅 - 紀伊中ノ島駅 - 田井ノ瀬駅、田井ノ瀬駅 - 和歌山駅、和歌山駅 - 紀和駅
- 1972年に紀和駅 - 紀伊中ノ島駅 - 田井ノ瀬駅間が休止し、2年後の1974年に廃止されたため、現在はデルタ線ではない。
- 山陽本線英賀保駅
- 蒸気機関車転向用のデルタ線が存在していた。
- 山陽本線岡山駅 - 宇野線大元駅 - 岡山操車場(現:岡山貨物ターミナル駅(貨物駅))
- 1984年に大元駅 - 岡山操車場間の連絡線が廃止。
- 山陽本線広島駅 - 向洋駅 - 宇品線南段原駅([貨]東広島駅構内?)
- 宇品線のデルタ線が存在していた。
- 東海道本線京都駅 - 西大路駅 - 山陰本線丹波口駅 (2016年2月28日廃止[4]、嵯峨野線梅小路京都西駅建設に伴う)
- JR九州(国鉄時代含む)
- JR東日本
- 宇都宮線(東北本線)小山駅
- 宇都宮線間々田駅と水戸線小田林駅を小山駅ホームを通らずに短絡する連絡線が存在した。東北本線と常磐線を短絡する目的の貨物線として1950年8月23日に完成し同年12月15日から使用開始。
- 当短絡線を使用した初めての定期旅客列車は準急(のち急行)「つくばね」で、1962年10月1日から運行開始。
- 水戸線から東北本線上り線へは直接進入できるが、東北本線下り線から水戸線へ進入する際は運行頻度の高い上り線を横切る形となるため、東北本線上り線と下り線の間に700メートル程の待避可能な中線を設けた(短絡中線と呼ばれた)。
- 1980年代半ば以降はほとんど廃止状態となり、2006年(平成18年)にすべて撤去された。
- 外房線・東金線大網駅
- 1972年の大網駅と外房線の移設後、元の外房線ルートが貨物用として引き続き使用されていた。1997年に廃止。
- 宇都宮線(東北本線)小山駅
- 秩父鉄道秩父駅 太平洋セメント工場引込線
- 名古屋鉄道
- 阪急電鉄
未成となったデルタ線
- 東京都交通局(都営地下鉄)
- 浅草線東銀座駅 - 東京駅 - 日本橋駅
- 2000年の運輸政策審議会答申第18号による、東京駅と成田空港及び羽田空港へのアクセス向上に向けた計画のひとつ(都営浅草線東京駅接着)である。都心直結線(京成押上線押上駅 - 新東京駅 - 京急本線泉岳寺駅)の計画に取って代わられたため、2016年の交通政策審議会答申第198号では削除されている。
- 浅草線東銀座駅 - 東京駅 - 日本橋駅
- 東海旅客鉄道・日本貨物鉄道
世界のデルタ線一覧
韓国
台湾
中国
脚注
- ^ 端部のある環状線のために1周毎に向きが変わるユーカリが丘線のような例外を除き、進行方向に縛られない車両は通常、向きが決められているため、逆にしないよう運用には考慮が必要である。
- ^ 明石孝「つばめ到着」によれば、実際にはこの図の範囲では転向することはできず、大阪に着いてから、外側線を下り、本線を越えて福知山線の塚口駅で向きを変えて宮原に入れ、翌日は宮原から大阪にそのまま出していたという。(『鉄道ピクトリアル アーカイブス セレクション 10 国鉄客車開発記 1950』、2006年)
- ^ 堀淳一『地図の中の札幌』亜璃西社、2012年11月、118頁。
- ^ 嵯峨野線 京都~丹波口駅間新駅設置に関する事業基本計画の変更認可申請ならびに東海道線(梅小路~丹波口間)の廃止届出書の提出について、JR西日本ニュースリリース2015/2/27発表