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性的人間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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性的人間
訳題 Sexual Humans
作者 大江健三郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 中編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出新潮1963年5月号
刊本情報
出版元 新潮社
出版年月日 1963年6月
1968年4月25日(文庫版)
総ページ数 236(文庫版)
id NCID BA31871080
[1]
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性的人間』(せいてきにんげん)は、1963年5月に「新潮」に掲載され[1]、同年6月新潮社から出版された大江健三郎中編小説である。

あらすじ

29歳の青年Jとその妻・蜜子、中年男のカメラマン、20歳の俳優、18歳のジャズシンガーら7人は、「地獄」をテーマとした短編映画を撮影するため、ジャガーに乗って耳梨湾近くの山荘に向かう。そこで彼らは乱交を行っていたが、その様子を村の子供たちに見られてしまう。その後、Jは妻の蜜子が中年男のカメラマンと不倫していたと聞かされ、離婚する意志を固める。国会議事堂前でJは一人の少年と出会う。Jはそこで少年が行おうとしていた性犯罪を止める。この少年はを書くことを目指していた。痴漢願望を持つ少年は線路に落ちた少女を助けようとして電車に撥ねられ、死ぬ。死亡した少年の遺志を継ごうと決意したJは、地下鉄内で痴漢を働こうと計画し、それを実現させたところで周囲の人々によって取り押さえられ、償いの涙を流すのだった。

登場人物

J
29歳の青年で、芸術家のパトロンをすることを喜びとしている。
蜜子
Jの妻。
中年男のカメラマン
蜜子と不倫していた。
若い詩人
25歳の青年。
サワ・ケイコ
18歳のジャズ・シンガー。
老人
偶然Jと知り合った、死の恐怖に襲われている初老男性。
少年
《厳粛な綱渡り》という詩を書くために痴漢行為を働こうと考えていた少年。

作品評価・解説

三島由紀夫は大江の小説では本作を特に高く評価し、「いちばん感動したのは最後のところで、男が凡俗社会に妥協して、おやじの言うなりに出世して外国へゆくことになった途端、忽ち地下鉄は駆け下りて、もっとも危険な破壊的な痴漢行為をする。あれがとてもいいし、そこらのどんなサラリーマンの心の底にもひそんでいる人間の真実だと思う」[2]と述べている。武満徹も大江の作品の中で、本作を最も愛好していたという[3]

備考

大江本人は『「性的人間」と「政治的人間」。政治的に牝になった国の青年は、性的な人間として滑稽に、悲劇的に生きるしかない。政治的人間は他者と対立し、抗争し続けるだけだ』と述べている[4]

脚注

  1. ^ 大江健三郎、すばる編集部『大江健三郎・再発見』集英社、2001年、229頁
  2. ^ 三島由紀夫『現代作家はかく考える』(大江健三郎の対談、「群像」1964年9月号に掲載)
  3. ^ 「大江健三郎 自作解説」私の中の見えない炎
  4. ^ 大江健三郎『大江健三郎 作家自身を語る』(2007年、新潮社)64頁