永納山城
永納山城 (愛媛県) | |
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永納山城跡のある永納山 手前山塊の中央右に山頂、中央左に南東部頂上。両峰間に城壁線が所在する。奥の山塊は世田山・笠松山。 | |
城郭構造 | 古代山城(神籠石系山城) |
築城年 | 不明 |
廃城年 | 不明 |
遺構 | 土塁・鍛冶関連遺構 |
指定文化財 | 国の史跡「永納山城跡」 |
位置 | 北緯33度58分40.30秒 東経133度3分21.25秒 / 北緯33.9778611度 東経133.0559028度座標: 北緯33度58分40.30秒 東経133度3分21.25秒 / 北緯33.9778611度 東経133.0559028度 |
永納山城(えいのうさんじょう)は、伊予国桑村郡の永納山・医王山(現在の愛媛県西条市河原津・楠、今治市孫兵衛作(まごべえさく))[1] にあった日本の古代山城(分類は神籠石系山城)。城跡は国の史跡に指定されている。
概要
愛媛県中部、高縄半島の東付け根において燧灘含む瀬戸内海を望む、独立山塊の永納山(標高132.4メートル[2])・医王山(標高約130メートル)上に築城された古代山城である[1][3]。文献に記載が見えない古代山城(いわゆる神籠石系山城)の1つで、現在一般的な山名を冠する城名は後世の命名による。1977年(昭和52年)に発見されたのち、現在までに数次の発掘調査が実施されている。
城は永納山・医王山の周囲に城壁を巡らすことによって構築される。城壁は基本的に土塁とし、城域内では鍛冶関連遺構が認められているが、その他の城門・水門・内部施設は詳らかでない。出土遺物としては、鍛冶関連遺物のほか土器片がある。
城跡域は2005年(平成17年)に国の史跡に指定された[3]。現在は西条市により環境整備が進められている。
歴史
古代
永納山城は文献上に記載のない城であるため、城名・築城時期・性格等は明らかでない。天智天皇2年(663年)の白村江の戦い頃の朝鮮半島での政治的緊張が高まった時期には、九州地方北部・瀬戸内地方・近畿地方において古代山城の築城が見られており、永納山城もその1つに比定される。発掘調査では8世紀初頭-前半頃の土器片が検出され、少なくともその頃までの存続が認められる[1]。
城域は古代には桑村郡に属し(津宮郷[4]または御井郷[5])、北方の今治平野は相の谷1号墳(伊予最大首長墓)・伊予国府推定地・伊予国分寺・伊予国分尼寺・越智駅が立地する政治的中心地で[6]、南方の道前平野でも古代遺跡の分布が認められる[1]。古代豪族としては今治平野では越智氏、道前平野では凡直氏などの存在が知られ、これら在地豪族が築城に関わった可能性を指摘する説もある[6]。
なお四国地方の古代山城としては、永納山城のほかに讃岐国の屋嶋城(香川県高松市)や城山城(香川県坂出市・丸亀市)が知られる。
近代以降
近代以降については次の通り。
- 1961年(昭和36年)、一部の専門家による列石の認知[7][8]。
- 1977年(昭和52年)、旧東予市の遺跡分布調査で列石の発見(記録上正式の発見。現地火災が発見のきっかけという[9])[7][8]。
- 1977-1978年(昭和52-53年)、第1-2次発掘調査(旧東予市教育委員会、1980年に報告書刊行)。
- 2002-2004年度(平成14-16年度)、史跡指定に向けた範囲確認発掘調査(旧東予市教育委員会のち西条市教育委員会、2005年に報告書刊行)[7][8]。
- 2005年(平成17年)7月14日、国の史跡に指定[3]。
- 2006-2011年度(平成18-23年度)、内部施設等の確認発掘調査(西条市教育委員会、2009年・2012年に報告書刊行)[8]。
- 2007年(平成19年)7月26日、史跡範囲の追加指定[3]。
- 2015年度(平成27年度)以降、保存に向けた環境整備・発掘調査(西条市教育委員会)[10][11][2]。
- 2016年度(平成28年度)、愛媛県西条市で第6回古代山城サミットの開催[12][8]。
- 2017年(平成29年)2月9日、史跡範囲の追加指定[3]。
遺構
- 城壁
- 城壁は全周約2.5キロメートルを測る[13][3]。城域は東西約470メートル・南北約720メートルで[1][3]、古代山城では一般的な大きさになる[14]。城壁の構造は基本的には内托式[注 1]の土塁によるが、西部頂上付近などでは石積み、南-東部では自然の露出岩盤とする[1]。土塁は列石の上に版築によって構築される。列石の石材は花崗岩類(永納山中で採石か[9])で、各石は幅約0.3-1メートルを測る[1]。また石積みは3箇所で確認され、最大規模は西部頂上付近のもので、幅約20.7メートル・最大高さ約1.8メートルを測る[1]。石材は花崗岩類で、各石は幅0.4-1メートル[1]。
- 鍛冶関連遺構
- 城域内で鍜冶鍛冶炉・炭置場・金床石などが認められる[1]。古代山城での検出は鬼ノ城に続く2例目になる[1]。時期を決める遺物が出土していないため、築城時の遺構か修城時の遺構かは明らかでない[1]。
そのほかに谷部(城域北側の予讃線線路付近)で水門の存在が推定され、その水門推定地の横では推定城門遺構が認められているが、いずれも遺存状況が悪く詳らかでない[1][3]。また鍛冶関連遺構以外の内部施設は認められていない[1]。城域からの出土遺物としては、鍛冶関連遺物のほか、飛鳥時代・奈良時代を主とする土器片が検出されている[1]。
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列石(南東部頂上付近)
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列石(山頂北方)
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鍛冶関連遺構検出地
文化財
国の史跡
- 永納山城跡
現地情報
所在地
交通アクセス
関連施設
- 西条市立東予郷土館(西条市周布) - 永納山城跡の出土品等を保管・展示。
脚注
注釈
- ^ 「内托式(外壁式)」は斜面にもたせかけて外側にのみ城壁を設ける形態を指し、これに対して「夾築式(両壁式)」は内・外の両側に城壁を設ける形態を指す(向井一雄 『よみがえる古代山城 国際戦争と防衛ライン(歴史文化ライブラリー440)』 吉川弘文館、2017年、pp. 21-22)。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 永納山城跡国史跡指定10周年記念シンポジウム資料 2015, pp. 3–8.
- ^ a b 平成29年度 現地説明会資料 2017.
- ^ a b c d e f g h i j 永納山城跡 - 国指定文化財等データベース(文化庁)
- ^ 永納山城跡 平成14年度~16年度調査報告書 2005, pp. 7–14.
- ^ 永納山城跡国史跡指定10周年記念シンポジウム資料 2015, pp. 21–30.
- ^ a b 愛媛県史 古代II(第一編 第一章 第二節 三) 1984.
- ^ a b c 永納山城跡 平成14年度~16年度調査報告書 2005, pp. 1–5.
- ^ a b c d e 永納山城発見から現在までの歩み(年表)(西条市ホームページ)。
- ^ a b c 永納山城跡パンフレット.
- ^ 平成27年度 現地説明会資料 2016.
- ^ 平成28年度 現地説明会資料 2017.
- ^ 第6回古代山城サミット西条大会を開催しました!(西条市ホームページ、2016年10月25日更新版)。
- ^ 永納山城はどのような城(西条市ホームページ)。
- ^ a b 国史跡 永納山城跡(西条市ホームページ)。
参考文献
(記事執筆に使用した文献)
- 史跡説明板(西条市教育委員会、2008年設置)
- 永納山城跡パンフレット(西条市教育委員会)
- 地方自治体発行
- 地方自治体史
- 『愛媛県史』 古代II・中世、愛媛県、1984年。
- 第一編 第一章 第二節 三「古代山城永納山」(愛媛県生涯学習センター「データベース『えひめの記憶』」参照)。
- 『愛媛県史』 資料編 考古、愛媛県、1986年。
- 五 一 三二「永納山城」(愛媛県生涯学習センター「データベース『えひめの記憶』」参照)。
- 『愛媛県史』 古代II・中世、愛媛県、1984年。
- 発掘調査報告書
- 『永納山城跡 -平成14年度~16年度調査報告書- (PDF)』西条市教育委員会、2005年。 - リンクは九州国立博物館「西都 太宰府」資料観覧ライブラリー。
- 現地説明会資料(リンクは西条市ホームページ)
- 平成21年度 現地説明会資料 (PDF)
- 平成22年度 現地説明会資料 (PDF)
- 平成27年度 現地説明会資料 (PDF)
- 平成28年度 現地説明会資料 (PDF)
- 平成29年度 現地説明会資料 - 1 (PDF) 、2 (PDF)
- その他
- 『永納山城跡国史跡指定10周年記念シンポジウム資料 (PDF)』西条市教育委員会、2015年。 - リンクは西条市ホームページ。
- 地方自治体史
- 事典類
関連文献
(記事執筆に使用していない関連文献)
- 『永納山城遺跡調査報告書』愛媛県東予市教育委員会、1980年。
- 『国指定史跡永納山城跡保存管理計画策定報告書』西条市教育委員会、2007年。
- 『史跡永納山城跡I -水門・城門・内部施設等確認調査報告書(平成18~20年度調査)-』西条市教育委員会〈西条市埋蔵文化財発掘調査報告書第2集〉、2009年 。 - リンクは奈良文化財研究所「全国遺跡報告総覧」。
- 『史跡永納山城跡II -内部施設等確認調査報告書(平成21~23年度調査)-』西条市教育委員会〈西条市埋蔵文化財発掘調査報告書第3集〉、2012年 。 - リンクは奈良文化財研究所「全国遺跡報告総覧」。
- 『史跡永納山城跡保存整備基本計画書』西条市教育委員会、2016年。
- 『史跡永納山城跡III -史跡整備に向けた発掘調査報告及び整備概要報告書3(平成27年度~平成29年度)-』西条市教育委員会〈西条市埋蔵文化財発掘調査報告書第4集〉、2018年 。 - リンクは奈良文化財研究所「全国遺跡報告総覧」。
- 『史跡永納山城跡IV -史跡整備に伴う事前確認調査報告書(令和2年度調査)-』西条市教育委員会〈西条市埋蔵文化財発掘調査報告書第7集〉、2022年 。 - リンクは奈良文化財研究所「全国遺跡報告総覧」。