JR九州キハ71系気動車
JR九州キハ71系気動車 | |
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キハ71系気動車(2017年8月22日) | |
基本情報 | |
運用者 | 九州旅客鉄道 |
種車 | キハ58系・キハ65形 |
改造年 | 1989年・1990年 |
改造数 | 1編成4両 |
運用開始 | 1989年3月11日[1] |
投入先 | 久大本線 |
主要諸元 | |
編成 | 4両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
最高速度 | 95 km/h |
台車 |
空気ばね台車 DT39B・TR218B |
動力伝達方式 | 液体式 |
機関 |
SA6D125H-1A×4基 SA6D125HD-1×2基 |
機関出力 |
SA6D125H-1A : 355 PS SA6D125HD-1 : 400 PS |
編成出力 | 1632.8 kW (2220 PS) |
保安装置 | ATS-SK、ATS-DK、EB装置、防護無線 |
キハ71系気動車(キハ71けいきどうしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の特急形気動車。
概要
[編集]久大本線沿線の湯布院町(現・由布市)・日田市・九重などの観光地と福岡市・北九州市を結ぶ観光特急「ゆふいんの森」用に、1989年(平成元年)3月11日のダイヤ改正にあわせて登場した[1]。増備車両登場以降は「ゆふいんの森I世」とも称される。
キハ58形およびキハ65形の改造車であるが、車体は完全に新製しており、また後述の2003年更新の際に台車を除いて多くの機器の交換を行っている関係で原形の面影はほとんどない。
構造
[編集]ここでは落成時の構造について述べる。
外装
[編集]1930年代のヨーロッパ(特にドイツ)の流線型気動車を彷彿とさせる、レトロ感覚の曲線的デザインを取り入れた車体構造である。先頭車・中間車とも客室部はハイデッカー構造とされ、側面窓も大型になっている。また、窓の部分は内側に10度傾斜している。先頭部は非貫通構造で、前面窓は上下2段に配置されている。塗装はオリーブグリーンのメタリック塗装■を施し、金色■の帯が入っている。
内装
[編集]客室部はハイデッカー構造で、乗降デッキ部分とは60 cmの高低差がある。座席はすべて前後間隔96 cm、インアームテーブル(肘掛内蔵テーブル)設置のリクライニングシートである。床材に難燃性木材を使用し、荷棚などの金属部分は金メッキ処理として豪華さを演出している。ハイデッカーであるため天井を高くすることができず、荷棚に大きな荷物を置くことができないので、荷物置き場やコインロッカーが設置されている。
その他のサービス設備など
[編集]中間車のキハ70 1にビュッフェを設置している(大型時刻表での表記はカフェテリアとされていた)。ビュッフェには冷蔵庫や電子レンジ・電気ポット・コーヒーメーカー・アイスクリームストッカーなどを設置し、軽食や飲み物を販売できるようになっている。増備中間車のキハ70 2は客室の一部がアートギャラリーとされた。
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キハ71 2 車内
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キハ71 2 トイレ
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キハ71 1 座席
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キハ70 1 セミコンパートメント
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キハ70 1 ビュッフェ
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キハ70 1 デッキ
駆動装置
[編集]台車・エンジンはキハ58・65形から流用しており、キハ65形改造のキハ71形はDT39B・TR218B空気ばね台車でDML30HSDエンジン (500 PS / 1600 rpm) 1台、キハ58形改造のキハ70形はDT22C揺れ枕吊り式のコイルばね台車でDMH17Hエンジン (180 PS / 1500 rpm) 2台を装備した。冷房用電源エンジンはキハ65形以来の4VK電源装置をキハ71形に搭載するが、ハイデッカー構造とされたため冷房装置は床下設置方式のものを新製している。
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キハ70形 DT22C動力台車
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キハ71形 DT39B動力台車
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キハ71 1 運転席
改造元の車両
[編集]車両番号 | 号車 | 種車 | 種車製造日(製造所) | 新製配置 | キハ71系化 | 備考 |
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キハ71-1 | 1号車 | キハ65-51 | 1970年5月7日(日本車輛製造) | 長野 | 1989年2月28日 | |
キハ70-1 | 2号車 | キハ58-490 | 1964年2月1日(新潟鐵工所) | 新潟 | 1989年2月28日 | |
キハ70-2 | 3号車 | キハ58-436 | 1963年6月29日(東急車両製造) | 松本 | 1990年4月26日 | |
キハ71-2 | 4号車 | キハ65-19 | 1970年2月20日(日本車輛製造) | 竹下 | 1989年2月28日 |
落成後
[編集]落成後は一貫して特急「ゆふいんの森」に使用されているが、団体臨時列車に使用されることもあり、一例として2009年に長崎本線・佐世保線・大村線を経由してハウステンボス駅まで入線実績がある。1993年7月には大阪駅での展示のため、同駅まで自力での走行実績がある。
1990年(平成2年)4月29日より中間車を1両追加して4両編成とされた。
1992年(平成4年)に最初のリニューアルが実施され、座席モケットを交換した。
1995年(平成7年)には二度目のリニューアルが実施され、床材と座席モケットの交換と同時に、キハ70 2については方向転換の上でアートギャラリーとビュッフェが隣接するように改められた。またトイレの処理方式は従来の循環式から真空吸引式に改造された。
2003年(平成15年)のリニューアルにあわせて機関換装が行われた。キハ71形のエンジンはコマツ製SA6D125HD-1 (400 PS / 2100 rpm) に、キハ70形のエンジンもコマツ製SA6D125H-1A(355 PS / 2000 rpm)にそれぞれ変更され変速機(爪クラッチに交換[3])もあわせて更新を受けたが、ブレーキの関係で最高速度の向上は行われなかった。キハ70 2のアートギャラリーはサロンスペースに改め、キハ70 1のビュッフェはショーケースとビールサーバーを新設して内装材を木材に変更し、ビュッフェ隣に4人掛けセミコンパートメント席を設けた。
2016年(平成28年)には、車体に取付けられた加速度センサーにより、空気ばねまたはコイルばねに平行して取付けたダンパの減衰力を切替えて車体の上下振動を緩和させる油圧式の可変減衰上下動セミアクティブダンパを、すべての台車に取り付け乗り心地の向上が図られた[4]。台車についてはキハ71形の軸周りが多少改修された以外は従来のままとされている。
脚注
[編集]- ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車情報 89年版』ジェー・アール・アール、1989年8月1日、144頁。ISBN 4-88283-110-4。
- ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 90年版』ジェー・アール・アール、1990年8月1日、176頁。ISBN 4-88283-111-2。
- ^ 九州を走るエコ車両(JR九州 環境報告書2017) - 九州旅客鉄道 2017年10月1日 (インターネットアーカイブ)
- ^ 「ゆふいんの森」に乗り心地を向上する上下制振制御システムを搭載 (PDF) - 九州旅客鉄道・公益財団法人鉄道総合技術研究所・日立オートモティブシステムズ 2016年5月11日