コンテンツにスキップ

ミリア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミリオから転送)
ライン川の距離標。一番上にローマ数字で書かれたXXXVI (36) は、バーゼルからのミリアメートル単位の距離を表す。その下にキロメートル単位の距離が「360,000 KM」と書かれているが、ドイツではコンマは小数点なので、36万kmではなく360 kmを表す。

ミリア (myria) は、1935年までメートル法で使われていた、104 = 10000(1万)を表す接頭語である[1][2][3]。記号は my、またはまれに ma、M。

ギリシア語で「1万」という意味の μύριοι (mýrioi) に由来し、英語で「無数の」を意味するミリアッド (myriad) と同じ語源である。

用例

[編集]

ミリアメートル (myriametre, 10 km) は、19世紀の列車の運賃表に見られるほか、今日でも電波波長による分類「ミリアメートル波」(波長 1–10 mym の電波。超長波)に名を残している。スウェーデンとノルウェーでは、ミリアメートルに等しい長さの単位ミール英語版 (mil) が今日でも日常的に用いられている。フランスで1812年から1839年まで使われていた習慣的度量衡英語版 (mesures usuelles) では、トワーズ(約2メートル)より長い長さの単位が存在しなかった。そこで、この期間にはミリアメートルが使用された[4]

フランスの取引で慣習的に使われる単位にミリアグラム英語版 (10 kg) がある。これは、ヤード・ポンド法常衡)のクォーター英語版(25ポンド)を置き換えるものである。アイザック・アシモフの1952年の小説『ファウンデーション対帝国』にはミリアトン (10 kt) が登場する。

歴史

[編集]

ミリアは、1795年にフランスで最初のメートル法の一部として採用された[5]。しかし、1960年の第11回国際度量衡総会 (CGPM) で国際単位系 (SI) が制定されたとき、ミリアはSI接頭語に含められなかった。

トマス・ヤングによれば、19世紀初頭の出版物では、ミリアの同義語としてミリオ (myrio) も使用されていた[2][3][6]。なお、「ミリオはミリアとは別の10−4 = 1/10000(1万分の1)を意味する接頭語であり、ミリアと共にミリオもメートル法に導入された」とする説もあるが、信憑性は不明である[7]ノースカロライナ大学チャペルヒル校数学科学教育センター長のラス・ローレットは、「105、10−4、10−5を表す接頭語が広く受け入れられたことはない」としている[8]

ミリアの記号は最終的に my となった。1905年、国際度量衡委員会 (CIPM) はミリアの記号を M と決定した。これにより、ミリアメートルの記号は Mm となる[9]。しかし、20世紀初頭、電気工学者たちがメガワット、メガオームなどの106を表す接頭語メガを使い始め、その記号 M とした。この用法が広まったため、1935年にCIPMは接頭語メガとその記号 M を正式に採用し、ミリアを完全に廃止した[10]。これにより、(初期メートル法のように10のごとではなく)1000の冪ごとに接頭語をそろえようとする方向性が明確になった。

アメリカ合衆国は1866年にミリアメートルとミリアグラムの使用を認可していたが、1975年にその使用はもはや許容できないと宣言した[11][12]

関連項目

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ 29th Congress of the United States, Session 1 (1866年5月13日). “H.R. 596, An Act to authorize the use of the metric system of weights and measures”. 2015年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月12日閲覧。
  2. ^ a b Brewster, David (1830). The Edinburgh Encyclopædia. 12. Edinburgh, UK: William Blackwood, John Waugh, John Murray, Baldwin & Cradock, J. M. Richardson. p. 494. https://books.google.de/books?id=0bIkTUZAbxcC&hl=de 2015年10月9日閲覧。 
  3. ^ a b Brewster, David (1832). The Edinburgh Encyclopaedia. 12 (1st American ed.). Joseph and Edward Parker. https://books.google.de/books?id=17RGAQAAIAAJ&pg=PA572&lpg=PA572&hl=de 2015年10月9日閲覧。 
  4. ^ Appell, Wolfgang (2009年9月16日). “Königreich Frankreich” [Kingdom of France] (German). Amtliche Maßeinheiten in Europa 1842 [Official units of measure in Europe 1842]. 2011年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月10日閲覧。
  5. ^ La Loi Du 18 Germinal An 3 - Décision de tracer le mètre, unité fondamentale, sur une règle de platine. Nomenclature des "mesures républicaines". Reprise de la triangulation.” (French). histoire.du.metre.free.fr. 2015年10月12日閲覧。
  6. ^ Dingler, Johann Gottfried (1823) (German). Polytechnisches Journal. 11. Stuttgart, Germany: J.W. Gotta'schen Buchhandlung. https://books.google.de/books?id=wF3zAAAAMAAJ&pg=PA500&lpg=PA500&hl=de 2015年10月9日閲覧。 
  7. ^ Measurements, Units of Measurement, Weights and Measures - NumericanaSBF Glossary: ET to E3
  8. ^ Russ Rowett A Dictionary of Units of Measurement: Metric Prefixes
  9. ^ Benoît, Jean-René (1905). “Annex 1”. In Comité International des Poids et Mesures (French). Procès-Verbaux des Séances. 3 (2 ed.). Paris, France: Gauthier-Villars, imprimeur-libraire du Bureau des Longitudes英語版, de l'École Polytechnique. p. 176. http://www.bipm.org/utils/common/pdf/CIPM-PV-scans/CIPM1905.pdf 2015年10月12日閲覧。 
  10. ^ Comité International des Poids et Mesures (1935) (French). Procès-Verbaux des Séances. 17 (2 ed.). Paris, France: Gauthier-Villars, imprimeur-libraire du Bureau des Longitudes, de l'École Polytechnique. p. 76. 
  11. ^ Roberts, Richard W. (1975-06-01). Metric System of Weights and Measures - Guidelines for Use. USA: Director of the National Bureau of Standards. Federal Register FR Doc.75-15798 (1975-06-18). "Accordingly, the following units and terms listed in the table of metric units in section 2 of the act of July 28, 1866, that legalized the metric system of weights and measures in the United States, are no longer accepted for use in the United States: myriameter, stere, millier or tonneau, quintal, myriagram, kilo (for kilogram)." 
  12. ^ Judson, Lewis V. (1976-10-01). “Appendix 7”. In Barbrow, Louis E.. Weights and Measures Standards of the United States, a brief history. Derived from a prior work by Louis A. Fisher (1905). USA: US Department of Commerce, National Bureau of Standards. p. 33. LCCN 76--60005. NBS Special Publication 447; NIST SP 447; 003-003-01654-3. http://www.nist.gov/pml/wmd/pubs/upload/sp-447-2.pdf 2015年10月12日閲覧。 
  13. ^ Danloux-Dumesnils, Maurice (1969). The metric system: a critical study of its principles and practice. The Athlone Press. p. 34. https://books.google.de/books/about/The_metric_system.html?id=ElHAAAAAIAAJ 2015年10月9日閲覧。  (a translation of the French original Esprit et bon usage du systeme metrique, 1965)

外部リンク

[編集]