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バラ

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バラ
ミセス・ハーバート・スティーブンス
ハイブリッド・ティー 1910年
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
: バラ属 Rosa

バラ薔薇)は、バラ科バラ属の総称である[1][2][3]。あるいは、そのうち特に園芸種(園芸バラ・栽培バラ)を総称する[1]が鑑賞用や食用とされる[4] )。本項では、後者の園芸バラ・栽培バラを扱うこととする。

バラ属の成形は、低木(灌木)、または木本性のつる植物で、や茎にを持つものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国雲南省からミャンマーにかけてが主産地で、ここから中近東ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生しない。

名称

「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの[注 1]漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「玫瑰」(まいかい)や「月季」(げっき)の異称もある(なお、「玫瑰」は中国語においてはハマナスを指す)。

ヨーロッパではラテン語rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「薔薇色」として「ピンク色」の意味をもつことが多い。

6月誕生花である。季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)。 花言葉は「愛情」であるが、色、状態、本数、組合せによって変化する。

分類

バラの分類方法は定まったものがなく、以下に示すのは一例である。 また、バラにはしばしば略式記号が用いられるため、それもともに記述する。

系統別の分類

原種

原産地別の原種
ロサ・カニナ
ロサ・グラウカ

主なもののみ。

  • ヨーロッパの原種
    • ロサ・アルバ(Rosa alba
    • ロサ・カニナRosa canina
    • ロサ・ガリカ(Rosa gallica
    • ロサ・キナモメナ(Rosa cinnamomea
    • ロサ・グラウカ(Rosa glauca
    • ロサ・ケンティフォリア(Rosa centifolia
    • ロサ・スピノシッシマ(Rosa spinosissma
    • ロサ・ウィクライアナ(Rosa wichuraiana
  • 中近東の原種
    • ロサ・フェティダRosa foetida
    • ロサ・フェティダ・ビコロール(Rosa foetida bicolor
    • ロサ・フェティダ・ペルシアナ(Rosa foetida persiana
    • ロサ・フェッチェンコアナ(Rosa fedtschenkoana
    • ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena
  • 中国の原種
  • 日本の原種
  • 北米の原種
    ロサ・カリフォルニカ
    • ロサ・キンナモメア(Rosa cinnamomea
    • ロサ・ニティダ(Rosa nitida
    • ロサ・カリフォルニカ(Rosa californica
    • ロサ・ヴィルギニアナ(Rosa virginiana
    • ロサ・パルストリス(Rosa palustris
品種改良に使用された原種
    • ロサ・ムルティフローラ(ノイバラ)(Rosa mulitiflora
    • ロサ・ウィクライアナ (テリハノイバラ)(Rosa wichuraiana
    • コウシンバラRosa chinensis
    • ロサ・ガリカ(Rosa gallica
    • ロサ・アルバ(Rosa alba
    • ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena
    • ロサ・ケンティフォリア(Rosa centifola
    • ロサ・フェティダRosa foetida
    • ロサ・モスカータ(Rosa moschata
    • ロサ・ギガンティアRosa gigantea

園芸品種

スブニール・ドゥ・ラ・マルメゾン(O)
ガリカ
イングリット・バーグマン(HT)、剣弁高芯咲き。
グラハム・トーマス(ER)、オールドローズの花容に黄色の花色は画期的であった。
オールドローズ(O)

後述の「ラ・フランス」より前の品種をいう。野生の原種であるワイルドローズを含めるが、含めない場合もある。主な系列としてガリカ、ダマスク、アルバ、ケンティフォリア(センティフォリア)などがある。優雅な花形に豊かな香りが特徴である。また一季咲きのものが多い。

  • アルバ(Alba)(A)
  • ケンティフォリア(Centifolia)(C)
  • ダマスク(Damask)(D) - 香水などに利用される、香りの良い系統。
  • ガリカ(Gallica)(G) - 赤や桃色の品種。背丈が低く、香りのあるものが多い。
  • ブルボン(Bourbon)(B)
  • ノワゼット(Noisette)(N) - つる性の系統。
  • ティ(Tea)(T)
  • チャイナ(China)(Ch) - 背丈の低い系統。
  • モス(Moss)(M) - ケンティフォリアとダマスクの派生種、の様なものがつく。
  • ポートランド(Portland)(P)
  • ポリアンサ(Polyantha)(Pol) - 小型で連続開花性に優れ、房状に花をつける系統。フロリバンダの元となった品種。
  • ランブラー(Rambler)(R) - テリハノイバラを元に品種改良され、長くしなやかな枝を持つ系統。
  • エグラテリア・ローズ(Eglanteria Roses)
  • ハイブリッド・パーペチュアル(H.Perpetual)
  • ハイブリッド・フェティダ (H.foetida) (HFt)
  • ハイブリッド・マクランタ(H.Macrantha)
  • ハイブリッド・ムスク(H.Musk)(HMsk)
  • ハイブリッド・モエシー(H.Moyesii)(HMoy)
  • ハイブリッド・センパビエレン(H.Semperviren)
  • ハイブリッド・ムルティフローラ(H.Multiflora)(HMult)
  • ハイブリッド・ルゴサ(H.Rugosa)(HRg)
モダンローズ

後述の「ラ・フランス」以降に作出されたものを指す。

  • ハイブリッド・ティー(Hybrid Tea)(HT) - 木立性で四季咲きの品種。
  • フロリバンダ(Floribunda)(FもしくはFL) - 木立性で四季咲き、房状に花をつける。
  • ミニチュア(Miniature)(Min) - 小型の品種。
  • つるハイブリッド・ティー(Climbing Hybrid Tea)(CLHT) - ハイブリッド・ティーの枝変わり。
  • つるフロリバンダ(Climbing Floribunda)(CLFもしくはCLFL) - フロリバンダの枝変わり。
  • つるミニチュア(Climbing Miniature)(CLMin) - ミニチュアの枝変わり。
  • つる(Climbing)(CL)
  • シュラブ(Shrub)(SもしくはSh)
  • イングリッシュ・ローズ(English Roses) (ER) - 1969年にデビッド・オースチンが発表した、オールドローズとモダンローズの特徴を合わせ持つシュラブ(半つる性)のモダンローズである。なお新たな系統が出来た訳ではない。国際登録ではシュラブローズで登録してある。
  • 修景用(Landscape Roses)(LS)
  • ハイブリッド・コルデシー(H.Kordesii)

など

花弁の数による分類

花型による分類

  • 平咲き
  • カップ咲き
  • ロゼット咲き
  • クオーター咲き
  • ポンポン咲き
  • 剣弁高芯咲き
  • 半剣弁高芯咲き
  • 丸弁抱え咲き

花期による分類

  • 一季咲き
  • 返り咲き
  • 繰り返し咲き
  • 四季咲き

樹形による分類

  • 木立性(ブッシュ)
  • 半つる性(シュラブ)
  • つる性(クライミング)

その他、小型つる性(ショートクライマー)、大型つる性(ロングクライマー)、枝垂れ状(ランブラー)、匍匐性(グラウンドカバー)など細かく分類される場合がある。

用途

花を鑑賞するため栽培されることが圧倒的に多いが、他にもダマスクローズDamask rose)の花弁から精油を抽出した「ローズオイルRose oil)」は、香水の原料やアロマセラピーに用いられる。

花弁を蒸留すると香水となるバラ油(ローズオイル)と副産物の液体「ローズウォーターrose water)」が得られる。

ローズウォーター
ローズウォーターは、中東インドなどでデザートの香りづけ[5] に用いられるほか、化粧水としても利用される。宗教施設の清掃、中世においては医薬品・点眼薬ともされた[6]

食用としては、農薬のかかっていない花弁をエディブル・フラワーとして生食したり、花弁をジャムや砂糖漬けに加工したり、乾燥させてハーブティーとして飲用し香りを楽しむ。また、乾燥した花弁をガラムマサラに調合したり、ペルシャ料理では薬味として用いる。

またバラの実である「ローズヒップ」は、ビタミンCを多量に含み強い酸味がある。花弁と同様に、ローズヒップオイルやローズヒップティーとして利用される。

栽培の歴史

西洋

バラが人類の歴史に登場するのは古代バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』である。この詩の中には、バラの棘について触れた箇所がある[7]

紀元前1500年頃の古代オリエントの地では約4種の野生バラがあり、ここから交雑によっていくつかの品種が誕生したといわれている[8]。バラはギリシャ時代を経て古代ローマへと伝播し、ヨーロッパの文化に定着することとなる[8]

古代ギリシアローマでは、バラは愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ヴィーナス)と関係づけられた[7]。また香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラはバラを愛好し[7]ユリウス・カエサルを歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用したと伝えられている。

ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。クレオパトラと同様にバラを愛した人物に、暴君として知られる第5代ローマ皇帝ネロがいる[7]。彼がお気に入りの貴族たちを招いて開いた宴会では、庭園の池にバラが浮かべられ、バラ水が噴き出す噴水があり、部屋はバラで飾られ、皇帝が合図をすると天井からバラが降り注ぎ、料理にもバラの花が使われていたと伝えられる。

中世ヨーロッパではバラの美しさや芳香が「人々を惑わすもの」としてキリスト教会によってタブーとされ、修道院薬草として栽培されるにとどまった[7]

イスラム世界では、白バラはムハンマドを表し、赤バラが唯一神アッラーを表すとされた。また、香油などが生産され愛好された。『千夜一夜物語』などやウマル・ハイヤームの『ルバイヤート』にもバラについての記述がある。

十字軍以降、中近東のバラがヨーロッパに紹介され、ルネサンスの頃には再び人々の愛好の対象になった。イタリアボッティチェッリの傑作「ヴィーナスの誕生」においてもバラが描かれ、美の象徴とされているほか、ダンテの『神曲』天国篇にも天上に聖人や天使の集う純白の「天上の薔薇」として登場する。またカトリック教会聖母マリアの雅称として「奇しきばらの花」(Rosa Mystica)と呼ぶようになる。

バラの母ジョゼフィーヌ皇后

ナポレオン・ボナパルト皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をしていた。ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン城に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた[7]

このころにはアンドレ・デュポンによる人為交配(人工授粉)による育種の技術が確立された[7]。ナポレオン失脚後、またジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3,000を超え、これが観賞植物としての現在のバラの基礎となった。

モダンローズの誕生

ハイブリッド・ティー(HT)系の誕生

1867年フランスのギョーがハイブリッド・パーペチュアル系の「マダム・ビクトル・ベルディエ」を母にティー系の「マダム・ブラビー」を交配して「ラ・フランス」を作出し、これがモダンローズの第1号となり、品種改良が一層進むことになった。「ラ・フランス」が冬を除けば一年中花を咲かせる性質は「四季咲き性」といわれ、画期的なものであった。

英国のベネットはこれに追随し、ティー系「デボニエンシス」とハイブリッド・パーペチュアル系「ビクトール・ベルディエ」を交配し、「レディ・マリー・フィッツウィリアム」を1882年に作り出し、これを新しいバラの系統として「ハイブリッド・ティー」系と命名した。ベネットの新品種は整った花容から、交配の親として広く利用されていった。

黄色いバラの誕生

当時のハイブリッド・ティー系には純粋な黄色の花はなかった。そこで、黄色のハイブリッド・ティー系の品種を作り出すことが課題とされた。1900年にフランスのジョセフ・ペルネ=デュシェ (Joseph Pernet-Ducher) が「アントワーヌ・デュシェ」の実生に原種の「ロサ・フェティダ(オーストリアン・イエロー)」をかけあわせて「ソレイユ・ドール」を作出、黄バラ第1号となった。しかし「ソレイユ・ドール」は「四季咲き性」がないので、一層の改良が加えられ、1907年には四季咲き性の「リヨン・ローズ」、さらに1920年には完全な黄色のバラ「スブニール・ド・クロージュ」を完成させた。ドイツのコルデスは「スブニール・ド・クロージュ」の子の「ジュリアン・ポタン」から1933年に「ゲハイムラート・ドイスゲルヒ(ゴールデン・ラピチュア)」を作出した。これが今の黄色のバラの親である。

欧米での品種改良の進展

コルデスは黄色のみならず、赤バラの改良にも尽力した。1935年に「クリムゾン・グローリー」を作り出し、これが後世の赤バラの品種改良に広く利用されることになる。英国では1912年に「オフェリア」を発表、花容、芳香に優れるだけでなく実をつけ易いことから、多くの品種の親になる。このようなヨーロッパでの品種改良は、第二次世界大戦で中断する。品種改良の中心は、戦火に見舞われないアメリカ合衆国に移る。1940年にラマーツが「クリムゾン・グローリー」から「シャーロット・アームストロング」を作り出し、フランスのメイアンの「マダム・アントワーヌ・メイアン」がアメリカで「ピース」と名づけられ、1945年に売り出された。「ピース」は大きな花をつけることから「巨大輪」と呼ばれ、品種改良に利用されるとともに、戦後のバラの流行を作り出すことになる。

フロリバンダ系(FL)の誕生

デンマークのポールセン兄弟が従来ある「ドワーフ・ポリアンサ系」の花を大きくし、北ヨーロッパの寒さに耐えられる品種を作出しようとしていた。1911年にポリアンサ系の「マダム・ノババード・レババースル」とランブラー系の「ドロシー・パーキンス」をかけ合わせ「エレン・ポールセン」を作り出し、続く1924年にはポリアンサ系の「オルレアンローズ」とハイブリッド・ティー系「レッドスター」の交配で「エルゼポールセン」「キルステンポールセン」などを出し、「ハイブリッド・ポリアンサ系」と命名された。

これを受けて、アメリカのブーナーなどが改良を続け、この系統は「フロリバンダ英語版系」と命名された。さらにドイツのコルデスが1940年に「ピノキオ」を発表した。ブーナーがこれに追随して「レッド・ピノキオ」「ラベンダー・ピノキオ」を発表し、これがフロリバンダ系の完成と言われる。

その後、フロリバンダ系の改良は色の多様性を求めることに重点がおかれ、1944年にはドイツのタンタウが「フロラドラ」、1949年ブーナーが「マスケラード」を、1951年にコルデスが「インデペンデンス」を作出した。「フロリバンダ系」は新しい系統であるが、切り花ではスプレーバラとして利用されるため、多くの品種が作り出されることとなった、またハイブリッド・ティーとの交配も試みられ、ますます多様性を強めている。

「奇跡」のブルー・ローズへの挑戦

「青いバラ」は、オールド・ローズの「カーディナル・ド・リシュリュー」などが知られていた。しかし、純粋な青さを湛えたバラを作り出すことは、青いチューリップと同様に世界中の育種家の夢であり、各国で品種改良競争が行われた。1957年、アメリカのフィッシャーが「スターリング・シルバー」を出し、「青バラ」の決定版といわれた。しかし、競争は止まず、1957年にはタンタウが一層青い「ブルームーン」を発表した。それにコルデスが1964年に「ケルナーカーニバル」を出し、1974年にフランスのメイアンは「シャルル・ド・ゴール」を発表と、熾烈な品種改良競争を展開した。日本でも青いバラに対する挑戦は盛んで、今日までに数多くの品種が生み出され、世界でも注目を浴びている。

2008年現在、一般的な交配による品種改良で最も青に近いとされる品種は、岐阜県河本バラ園が2002年に発表した「ブルーヘブン」、アマチュア育成家である小林森治が1992年に発表した「青龍」や2006年に発表した「ターンブルー」等が挙げられる。

従来、青い色素を持つ原種バラは発見されていなかったため、従来の原種を元にした交配育種法では青バラ作出は不可能とされてきた。そのため、現在の園芸品種にも青色といえる品種は存在しない。また「青バラ」と呼ばれる品種は、主に赤バラから赤い色素を抜くという手法で、紫や藤色に近づけようとしたものである。その後、サントリーの福井祐子らの研究により、青い色素を持たないとされてきたバラから、シアニジン誘導体のバラ独自の青い色素が発見された[9](「青龍」を始めとするいくつかの青バラより)。これはバラ独自のもののため、「ロザシアニン」(Rosacyanin)と命名された。

しかし、この色素を持つ「青龍」は花粉をほとんど出さないために、交配親としては不向きとされており、遺伝子操作に頼らない青バラへの道は依然険しく長い道のりのままではある。だが、「ロザシアニン」の発見は、純粋な青バラ作出を目指す育種家にとって一つの希望を示したといえる。

中国

中国のの末期の詩人高駢821年-887年)の七言絶句『山亭夏日』(『全唐詩』巻598所収)には薔薇(しょうび)としてバラが詠まれている[10]

中国の庭園で伝統的に栽培されたバラは8種である[8]18世紀に中国を旅したヨーロッパ人が中国庭園で見たバラは、灌木性で四季咲き、多くは重弁の品種群であった[8]。特に華中地域では優れたバラ類が庭園に栽培されており、ヨーロッパにも持ち込まれた[11]

カール・フォン・リンネ1753年ロサ・インディカ (R. indica) について年報『Species Plantarum』に掲載した[12]。またジャカン1768年ロサ・キネンシス (R. chinensis) について植物誌『Observationum Botanicarum Pars III』に記載した[12]。これらは赤花の園芸品種であったが、近縁の品種であったと考えられている[12]。中国のバラはヨーロッパに先んじて日本へも伝来した[12]

日本

近代以前

日本はバラの自生地として世界的に知られており、品種改良に使用された原種のうち3種類(ノイバラテリハノイバラハマナス)は日本原産である。ノイバラの果実は利尿作用があるなど薬用として利用された。

古くバラは「うまら」「うばら」と呼ばれ、『万葉集』にも「みちのへの茨(うまら)の末(うれ)に延(ほ)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」という歌がある。『常陸国風土記』の茨城郡条には、「穴に住み人をおびやかす土賊の佐伯を滅ぼすために、イバラを穴に仕掛け、追い込んでイバラに身をかけさせた」とある。常陸国にはこの故事にちなむ茨城(うばらき)という地名があり、茨城県の県名の由来ともなっている。

また、中国で栽培されていたバラもその多くは江戸時代までに日本に渡来している[8]。江戸時代には身分・職業を問わず園芸が流行したが、中国原産のバラであるモッコウバラコウシンバラなどが園芸品種として栽培されていた。江戸時代に日本を訪れたドイツ人ケンペルも「日本でバラが栽培されている」ことを記録している。また与謝蕪村が「愁いつつ岡にのぼれば花いばら」の句を残している。

明治以後

このように日本人にゆかりのある植物であるが、バラが日本でも現在のように「花の女王」として愛好されるようになるのは明治以降である。

明治維新を迎えると、明治政府は「ラ・フランス (和名:天地開) 」を農業試験用の植物として取り寄せ、青山官制農園(現:東京大学農学部)で栽培させた。馥郁とした香りを嗅ごうと見物客がしばしば訪れたので、株には金網の柵がかけられたという。

その後、バラが接ぎ木で増やせることから、優秀な接ぎ木職人のいる東京郊外の埼玉県川口市安行や、京阪神郊外の兵庫県宝塚市山本で栽培が行われるようになった。バラは皇族華族、高級官僚といったパトロンを得て、日本でも徐々に愛好され始め、生産量も増え始めた。

大正から昭和の頃には一般家庭にも普及し、宮沢賢治が「グリュース・アン・テプリッツ (和名:日光) 」を愛し、北原白秋の詩にもバラが登場するなど、日本文学においてバラが題材とされることも増えた。

しかし第二次世界大戦下では、日本でもバラなどの花卉より野菜などの栽培が優先され、生産は一旦停滞した。

戦後

戦後すぐの1948年には東京・銀座でバラの展示会が開かれた。さらに1949年には神奈川県横浜市でバラの展示会が開かれ、そのときにはアメリカから花を空輸して展示用の花が揃えられた。鳩山一郎吉田茂などのバラ愛好家は戦後日本でのバラの普及に貢献した。高度経済成長の波に乗って日本でもバラは普及し、農業試験場を中心に品種改良が行われるようになった。また戦後進められたインフラ整備の一環として、公立・私立の植物園公園等が全国各地に設置され、その中にはバラ園で知られる施設もある。

日本でも戦後急速にバラが普及して個人栽培家が増えると、ハイブリッドティーの花の出来栄えを競うコンテストが盛んに行われた。これは菊の品評会と同様に栽培技術を競うもので、大いに栽培技術の向上につながった。バラは切り花としても普及し、日本においても花卉としてバラはキクカーネーションと並ぶ生産高があり、ハウス栽培で年中市場に供給されている。近年は一般家庭でもガーデニングが流行し、オールドローズなどが植栽素材として再び注目を集め、多くの人に愛好されるようになった。

大手私鉄の参入

1950年代には、大手私鉄各社が沿線開発の一環としてバラ園の造営を行うようになり、各地にバラ園が開園された。

京阪電気鉄道は戦前から大阪府枚方市菊人形の展示などを行っていたが、秋の風物である菊に対し、春の風物としてバラ園を開園し集客を図ることとした。同社は「東洋一のバラ園」の造園を企画し、当時は日本人でただ一人の英国園芸協会会員で、バラの導入や品種改良で実績のあった岡本勘治郎をバラ園造営の監督に迎えた[13]1955年に京阪ひらかた園芸企画(現:京阪園芸)を設立、同年12月23日ひらかたパーク内に「ひらかた大バラ園」を開園した[14]。現在は「ひらかたパーク・ローズガーデン[15]」の名称で営業している。

関東でも同時期に、京成電鉄が戦前から千葉県習志野市で直営していた遊園地「谷津遊園」内に、1957年にバラ園を開園。谷津遊園でも秋には菊人形展が行われていた。1959年には京成バラ園芸を設立するとともに、千葉県八千代市に「京成バラ園」を開園した[16]。谷津遊園の閉鎖後もバラ園は習志野市営「谷津バラ園」として残されている。

続いて小田急電鉄の直営遊園地「向ヶ丘遊園」にも1958年に「ばら苑」が開園。向ヶ丘遊園の閉鎖後は川崎市により「生田緑地ばら苑」として保全されている。また東京都調布市にあった京王帝都電鉄の直営遊園地「京王遊園」に1952年に開園した東京菖蒲園(のち京王百花苑)は1997年に「京王フローラルガーデンANGE」としてリニューアルされ「ローズガーデン」が設置された(2021年閉鎖)。

大手私鉄系園芸・造園会社の中でも、とりわけ京阪園芸と京成バラ園芸の2社は、沿線観光施設としてバラ園を運営するだけでなく、バラの育種も手がけ新品種を多数作出している。このように農業試験場や種苗会社だけでなく、鉄道事業者がバラの育種を牽引している点は日本の特徴である。

バラ生産

バラ園

バラ園はバラを育てて展示鑑賞するための庭園。

日本のバラ園は以下を参照。

バラの施設一覧を表示するには右の [表示] をクリックしてください。

日本

苗木生産施設

バラのイベント

育種家と研究家収集家

育種家と研究家収集家を表示するには右の [表示] をクリックしてください。

日本

イギリス

イギリスでは、バラの国立コレクションの異なる分野がデヴィッド・オースティンとピーター・ビールズによって維持された。王立ローズ・ソサエティは、それらを1900年以前のシュラブローズを維持したモティスフォント修道院と、コレクションを維持したバーミンガム大学ウィンターボーン植物園とともに「ヨーロッパのバラの歴史遺産」に指定している。

フランス

ドイツ

オランダ

アメリカ合衆国

チェコ

バラの品種名になった固有名詞

バラの品種名になった固有名詞の一覧を表示するには右の [表示] をクリックしてください。

人名

神話、伝承

地名、国名、建造物

スカーレット・イワミザワ(HT)

その他

バラに関する文化

シンボルとしてのバラ

  • sub rosa英語版 - 「バラの下で」を意味するラテン語でスブ・ロサーと読む。ローマ神話などで沈黙の神ハルポクラテスへの贈り物にバラが用いられたという神話が由来で秘密をバラさないことを示すシンボルとなった。フランス語で、Découvrir le pot aux roses (バラの鉢を発見する)という慣用句は、真実の発見を意味する。
  • 黄金のバラ - ローマのカトリック教会の教皇が伝統的に祝福を行う。敬意や愛情の証として教会や国家元首などに贈られる造花。
  • バラ窓 - 聖女マリアの象徴として、教会のステンドグラスのモチーフであった。

花の色

バラの花は伝統的に、強度や色相が異なる雑多な色のものが栽培されてきました。無数の色の組み合わせのものもあるので、様々な色が得られます。栽培者は、この種類の花の色素の利用できる範囲を利用してその範囲をさらに拡大することができました。これにより、黄色、オレンジ、ピンク、赤、白やこれらの色の多くの配合が得られます。ただし、本当の紫や青を生み出すための青色の色素が無いため、21 世紀まではすべての青い花を得るように何らかの顔料を使用するしかありませんでした。現在、遺伝子組み換えのおかげで、日本の会社がやっと2004年に青いバラを植えることに成功しました[24]

いわゆる「花の色の言語」によりますと、バラの様子や色によって、さまざまな感情が象徴されます。例えば、イングリッシュローズは愛、白いバラは悲しい愛や知恵、チャイニーズローズは思いやり、黄色いバラは不倫、ピンクのバラは愛の誓い、赤いバラは美徳または熱烈な恋愛、ティーローズは喜び、ゼニアオイは単純な愛を表します[25][26]。 色は、長い間使われてきた植物育種プログラムを使用して得られます。バラは、多くの場合、市場にプレミアム価格で販売できるように、新しく魅力的な色の組み合わせのために栽培されます[27]

国や自治体の花

以下、バラをシンボルとする国・地域・自治体名を明確にするため、太字で表記。

アジア

アフリカ

ヨーロッパ

北アメリカ

慣用句・熟語

  • under the rose - 秘密の意味。
  • 茨の道 - 辛く険しい道のりのこと。
  • 青いバラ(the blue rose) - 神の祝福、または、不可能の意。
  • きれいなバラには棘がある - 外見の美しさに気を取られると危険な目に会う事がある。
  • There's no rose without a thorn. - 「棘のないバラは無い」または「世に完全な幸福はない」。フランスでは「誰にでも弱点がある」という意味。
  • Run for the roses - ケンタッキーダービーの意。

ギャラリー

脚注

注釈

  1. ^ 語頭母音の脱落による。「いだく → 抱く」「いづ(る) → 出る」「いまだ → まだ」などと同様の変化。
  2. ^ 2013年にリニューアルされるまでは243種、株数は国内第4位の22,000株だった。

出典

  1. ^ a b 小林義雄 著「バラ」、相賀徹夫 編『万有百科大事典 19 植物』1972年。 
  2. ^ 亀岡泰家 著「バラ」、フランク・B・ギブニー 編『ブリタニカ国際大百科事典ティービーエス・ブリタニカ〈第2版改訂版〉、1993年。 
  3. ^ 日外アソシエーツ 編「バラ」『植物3.2万名前大辞典』紀伊國屋書店、2008年。 
  4. ^ 「食べるバラが好調 愛知の法人 加工品売り上げ5倍に」日本農業新聞』2020年3月19日(8面)2020年3月21日閲覧
  5. ^ TOTOSK KITCHEN Vol. 24 ローズウォーターにんじんのローズグラタン”. dacapo (ダカーポ) the web-magazine. 2016年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月18日閲覧。
  6. ^ Jeanne Bourrin, La Rose et la mandragore, (ISBN 2-87686-072-4), p. 162.
  7. ^ a b c d e f g バラをたどる:バラの歴史”. 蓬田バラの香り研究所. 2019年6月6日閲覧。
  8. ^ a b c d e 中尾 2006, p. 452.
  9. ^ 福井祐子「バラ花弁の新規色素Rosacyanin類の構造(口頭発表の部)」『天然有機化合物討論会講演要旨集』42(0), 55-60, 2000, NAID 110006681912, doi:10.24496/tennenyuki.42.0_55
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参考文献

関連項目