ノティール
ノティール | |
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Cité de la Mer(海洋博物館)に展示されるノティールの実物大模型 | |
基本情報 | |
船籍 | フランス |
経歴 | |
就航 | 1984年 |
要目 | |
長さ | 8.0 m |
幅 | 2.7 m |
喫水 | 3.81 m |
主機関 | 電動機 |
速力 | 1.5ノット |
航続距離 | 7.5 km |
潜航時間 | 120時間 |
潜航深度 | 6000 m |
搭載人員 | 乗員3名 |
ノティール(フランス語: Nautile)はフランスの有人潜水調査艇である。フランス国立海洋開発センター(CNEXO)およびその後身であるフランス国立海洋開発研究所(en:IFREMER)によって発注・建造された。1984年11月に就役。深さ6000メートルまで潜水可能である。
概要
[編集]ノティールはバチスカーフを元に製造された小型潜水艇で、正副パイロットと科学研究スタッフの3名が乗り込める。長さ8メートル、幅2.7メートル、高さ3.81メートルで、耐圧殻はチタン合金で作られている。浮力材にはシンタクチックフォームを使用し、潜航用バラストには数ミリ径の鉄球を1トン積載する。船尾のメインプロペラのほかに船体の前後左右に4つのスラスターを装備することで高い運動性を実現し、水銀を用いたトリムタンクによって船体のピッチ姿勢制御も可能となっている。3つの観測窓の他に、静止画像カメラ2基、カラービデオカメラ2基、一連のフラッドライト(投光機)を装備している。リモート操作によるロボット・アーム2本により海底の標本採取や各種水中作業をこなす。
ノティールはフランス語でオウムガイのことであり、ジュール・ヴェルヌの創作した潜水艦ノーチラス号や、アメリカ海軍の原子力潜水艦ノーチラスなどと同一語源である[1]。日本語では「ノチール号」と表記されることもある[2]。
科学調査
[編集]潜水支援母船である「ナディール」「アタラント」「プルクワ・パ?」に搭載され、世界各地の海域で海洋地質学と深海生物学の研究に携わっている。進水後のテスト潜航をプエルトリコ海溝で行い6740メートルの潜航深度を記録[3]。初めての本格的な調査任務は1985年に行われた日本とフランスの共同調査「KAIKO計画」であり、日本海溝などに27回の潜航を行ってプレートテクトニクスの研究に大きな成果を挙げた。銚子沖の海底で沈み込みプレート境界をはじめて直接視認し撮影することに成功し、襟裳海山に海底地震計・海底傾斜計を設置する[4]など、実証的なプレートテクトニクス研究の草分けとなる成果を上げている。ノティールは船体と搭載装置の改良を続けつつ、2008年の時点で累計1600回以上の潜水を行っている。
その他の活動
[編集]その潜航能力を活かしてノティールは科学調査以外の様々な任務に携わっている。1987年以降数度に亘ってタイタニック号の残骸を調査してその画像を撮影した。2002年にはスペインの大西洋側で沈没した石油タンカープレスティージ号による大規模な油濁事故(en:Prestige oil spill)の際に清掃作業に参加した。また2008年5月に完成したen:ANTARESニュートリノ望遠鏡の建設作業に何度か使用されている。2009年6月のエールフランス447便墜落事故に際しては墜落機のブラックボックス捜索に従事した。
参考文献
[編集]- 島村英紀『深海にもぐる - 潜水艇ノーティール号乗船記』国土社、1987年。ISBN 978-4337330122。1992年11月に国土社てのり文庫に集録。ISBN 4-337-30027-9
- 海溝1研究グループ 編『日本周辺海溝の地形と構造日仏海溝計画(第1期)のデータ図集』東京大学出版会、1987年。ISBN 9784130610889。
- 海溝2研究グループ 編『日本周辺の海溝6000mの深海底への旅 写真集』東京大学出版会、1987年。ISBN 9784130660983。
- 小林和男『深海6000メートルの謎にいどむ』ポプラ社、1986年7月。ISBN 4-591-02303-6。
脚注
[編集]- ^ 小林 1986, pp. 132–133.
- ^ 小林 1986.
- ^ IFREMERホームページ
- ^ 島村英紀『深海にもぐる - 潜水艇ノーティール号乗船記』(国土社、1987年)ISBN 978-4337330122。1992年11月に国土社てのり文庫に集録。ISBN 4-337-30027-9
外部リンク
[編集]- Nautile - Ifremerの公式サイト『Nautile』のページ(英語)
- BBC 2002年12月2日ニュース 図解付き