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パイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アップルパイ
ミルフィーユ(ナポレオンパイ)

パイ: pie: die Pastete, der Blätterteig: tarte, tourte)は、小麦粉バターなどから作った生地(パイ生地)に、甘く煮た果実類やナッツ類、類その他を包み込むなどして、オーブンで焼き上げた料理あるいは菓子。バターの代わりにショートニングラードを用いることもあり、砂糖を入れる場合もある。

なお、「パイ」と名称に付いてもパイではない食品や、食品としての使用目的以外に作られるパイも存在する(後述)。

由来

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原型として、古代エジプトの「ウテン・ト」や中近東の「バクラバ」が挙げられ、現代のパイの発案者として、クロード・ロランとコンデ侯爵家のフィユ(Feuillet)の2説がある[1]

オックスフォード英語辞典によれば、パイに関する最初の記録は1303年、ヨークシャーのボルトン修道院の出納帳であるという。イギリスでの初期のパイはベイクド・ミート・パイのようなパイ包み焼き料理だった。原始的なかまどでの長時間の炙り焼きに耐えられる容器として、パイ皮は非常に厚く硬く作られ、食用には適さなかった。16世紀になり、オーブンの改良とペストリーの進歩により、食べるためのパイ皮のレシピが現れ始める。一方、アラブ世界から伝わった菓子パンの影響から、イタリアではルネサンス期に小さくて甘いパイが発展し、ヨーロッパ全域に広まった[2]

「パイ」と名称に付くパイではない食品

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ボストンクリームパイ英語版や日本の菓子であるチョコパイなど、ケーキなのにパイと名がつく場合がある。チョコパイを製造するロッテでは米国では丸いケーキをパイと呼ぶからとしている[3]。しかし、これはアメリカの植民地時代に限った話で、パイ皿でケーキを焼くのが一般的であったことに由来する。ボストンクリームパイが作られたのも植民地時代で、明らかにケーキなのがパイという名称で定着してしまったためである[4]

代表的なパイ

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甘いパイ

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パンプキンパイ

以下は「パイ」とは呼ばれるものの、オーブンで焼いたものではなく、焼いたパイ生地や砕いたグラハム・クラッカーなどをバターと混ぜたものを敷き詰めたパイ皿(上述のパイのように練りパイ生地だけを台にしているものもある)にクリームなどを盛り付けた生菓子の仲間である。

日本にはパイ生地を用いて、中に小豆、カボチャやサツマイモなどの餡を詰めた折衷様式の和菓子もある。
日本のレアチーズケーキは上記のパイ皿を生地としている物が多い(ムース風の物やタルト生地の物などパイ皿を用いない物もある)。

甘くないパイ

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メルトン・モーブレー・ポークパイ

その他のパイ

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日本の菓子

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パイ生地を利用した料理

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  • パイ包み焼き:肉類や魚類の香りを逃がさないように、全体をパイ生地で包み込んでオーブン焼きした料理。
  • ポットパイシチュースープを入れた耐熱容器の口に蓋をするようにパイ生地を貼り付け、容器ごとオーブンで焼いたもの。中のシチューやスープにパイを崩し入れながら食べる。パイ生地で具を包んで焼くこともある。
  • アップルダンプリング:皮をむいたリンゴをパイ生地で包みこんでオーブンで焼いた菓子。果実を丸ごと包むブールドロ(これのリンゴをセイヨウナシに変えるとドゥイヨン)という菓子もある。

菓子パイ

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上述の折込パイでの製造過程において、砂糖の粒(主にグラニュー糖)を練り込んだり表面にまぶした後、形を整えて焼き上げた菓子である。ただし、ケーゼシュタンゲンのように砂糖を用いない菓子パイも一部にはある。なお食品成分表での食品名はパフパイと表記されている。

焼き上げの時に溶けた砂糖が、出来上がった後に冷えて固まることから、他のパイよりも硬い食感がある。

  • リーフパイ
  • スティックパイ
  • パルミエ
  • ケーゼシュタンゲン

食品でないパイ

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  • パイ皿(厚手の紙やアルミ箔でつくられた深さのある皿)にホイップクリームや食品ではないシェービングクリームを盛ったものは、コメディバラエティ番組において良く用いられる。特にアメリカの映画やテレビドラマ、アニメによく登場する。他の登場人物の顔にぶつけるため、あるいは互いにぶつけ合うために用いられる。そういったシチュエーションは「パイ投げ」と呼ばれる。欧米では政治家や大企業の経営者の会見などで敵対意識を持った人に投げつけられることもある。
  • 一般にパイは切り分けて食べられ、食べる人数によって1人あたりの量が変わることから、「複数者によって分け合われる収益や顧客などの総量」の比喩に使われ、「パイを奪い合う」「パイが大きくなる(=市場規模が大きくなる)」などと言う。ちなみに円グラフを英語でパイチャート(pie chart)と呼ぶ。
  • 様々なスポーツ競技に使われるフリスビーは、もともとはパイ皿を使った射的遊技であった。

脚注

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出典

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  1. ^ お菓子の由来物語 P.49
  2. ^ a b パイの歴史物語
  3. ^ FAQ_lotte”. ロッテ faq.lotte.co.jp. 2024年10月5日閲覧。
  4. ^ Steane, Kathryn (2024年7月3日). “How Boston Cream Pie Got Its Inaccurate Name” (英語). Chowhound. 2024年10月6日閲覧。
  5. ^ 日本初登場も!夏季限定『ホームメイドセイボリーパイ』 | Bubby’s バビーズ” (2020年6月30日). 2023年12月4日閲覧。
  6. ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,栄養・生化学辞典,百科事典マイペディア,和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),世界大百科事典内言及, 精選版. “ピザとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月4日閲覧。
  7. ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,栄養・生化学辞典,百科事典マイペディア,和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),世界大百科事典内言及, 精選版. “ピザとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月4日閲覧。
  8. ^ 1957 broadcast
  9. ^ 「ピッツァ」「ピザ・パイ」 小麦粉のおはなし 財団法人製粉振興会

参考文献

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  • 猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎、2008年9月。ISBN 978-4779003165 

関連項目

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パイに似た料理

外部リンク

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