ヘブライ数字
ヘブライ数字(ヘブライすうじ)は、ヘブライ文字を数字として使った記数方法である。
現代のイスラエルでは通常アラビア数字が使われるが、ユダヤ暦の日付を記したり、聖書の章節番号を記すときにはヘブライ数字が用いられる。
歴史
[編集]ヘブライ文字を使った記数方法は、紀元前2世紀のシモンの硬貨に見えるものがもっとも古い[1]。当時ギリシアではギリシア・アルファベットを使ったイオニア式の数字(ギリシアの数字参照)が行われており、これを借用したものと考えられる。
14世紀以降[2]、聖書に章節番号がつけられると、そこにもヘブライ数字が使われた。
表記
[編集]下表において、ヘブライ文字のラテン文字への翻字はISO 259方式による。
ヘブライ文字 | 翻字 | 数価 | ヘブライ文字 | 翻字 | 数価 | ヘブライ文字 | 翻字 | 数価 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
文字 | 読み[3] | 文字 | 読み | 文字 | 読み | ||||||
א | Alef | ʾ | 1 | י | Yod | Y | 10 | ק | Qof | Q | 100 |
ב | Bet | B | 2 | כ | Kaf | K | 20 | ר | Resh | R | 200 |
ג | Gimel | G | 3 | ל | Lamed | L | 30 | ש | Shin | S̀ | 300 |
ד | Dalet | D | 4 | מ | Mem | M | 40 | ת | Tav | T | 400 |
ה | He | H | 5 | נ | Nun | N | 50 | ||||
ו | Vav | W | 6 | ס | Samekh | S | 60 | ||||
ז | Zayin | Z | 7 | ע | Ayin | ʿ | 70 | ||||
ח | Het | Ḥ | 8 | פ | Pe | P | 80 | ||||
ט | Tet | Ṭ | 9 | צ | Tsadi | Ṣ | 90 |
500 から 900 までは、400+100 (תק)、 400+200 (תר)、 400+300 (תש)、 400+400 (תת)、 400+400+100 (תתק) のように表す。別の方法として、5つの末尾形(ך ם ן ף ץ)を 500 から 900 までの数字に使う方法がある[4]。
複数の桁からなるときは、上の桁を先に(右に)書く。例:121 は קכא になる。
ただし、15 は 10+5(יה)ではなく、9+6(טו)と書く。また 16 も 10+6(יו)ではなく 9+7(טז)と書く。これは、「יה」が神の名の最初の2文字であること、יו も固有名詞で神の名の略形として使われるため、それを避けたものである。
1000 以上の数は、1で1000を、2で2000を……というように繰りかえし用いる。あいまいさを防ぐために、千の桁のうしろにアポストロフィに似た記号をつけたり[5]、文字の上にトレマに似た2つの点をつけて表す[4]ことがある。
補助記号
[編集]通常の単語と誤ることを避けるため、数字であることを示す記号が2種類ある。本来は省略記号だが、数字の表記に転用したものである。
数字が1文字の場合には、文字の後(左)にアポストロフィに似た記号を置く。例:א׳
数字が複数文字の場合には、最後の文字の前(右)に引用符に似た記号を置く。例:קכ״א
Unicode では以下のように定義されている。
文字 | 符号位置 | 文字名称 |
---|---|---|
׳ | U+05F3 | Hebrew Punctuation Geresh |
״ | U+05F4 | Hebrew Punctuation Gershayim |
例
[編集]聖書の詩篇23篇は、תהלימ כג と書き、ヘブライ文字のまま「テヒリーム カフ・ギメル」と読む[6]。
ユダヤ暦5775年(西暦2015年)は、ה׳תשע״ה と書く。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- Kautzsch, E. Cowley, A.E.訳 (1990) [1910], Gesenius' Hebrew Grammar (2nd English ed.), Oxford: Clarendon Press, ISBN 0198154062
- 左近義慈『ヒブル語入門』(9版)教文館、1989年(原著1966年)。ISBN 476427003X。
- キリスト聖書塾『ヘブライ語入門』(2版)、1991年。ISBN 4896061055。
- “Hebrew”. Unicode Consortium. 2015年5月30日閲覧。