コンテンツにスキップ

ロッキー・マウンテン・オイスター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロッキー・マウンテン・オイスター
別名 プレーリー・オイスター、カーフ・フライ
発祥地 カナダアメリカ合衆国
主な材料 睾丸(牛のもの。豚や羊の場合も)、小麦粉、塩胡椒
テンプレートを表示

ロッキー・マウンテン・オイスター: Rocky Mountain oysters)とは、睾丸を食材とするアメリカ合衆国およびカナダの料理。の睾丸を使った料理もこの名で呼ばれることがある[1]。カナダではプレーリー・オイスター: prairie oysters)として知られる[1]。睾丸の皮を剥き、小麦粉と塩胡椒をまぶして油で揚げるのが代表的な調理法である[2]。揚げる前に叩いて伸ばすこともある。珍味とされ、前菜としてカクテルソースにつけて食べるのが一般的[3]

概要

[編集]
イタリアの市場で売られている未調理の牛睾丸。

ロッキー・マウンテン・オイスターはアメリカ西部およびカナダ西部英語版のうち、牧畜が盛んで牛の去勢が一般的に行われている地域の伝統料理であり[4]、その話題性から広く知られている。カナダでは主に「プレーリー・オイスター」と呼ばれ、デミグラスソースをかけて食べることが多い[3]

オクラホマ州テキサス州最北部では、仔牛の睾丸から作られたものを「カーフ・フライ」(仔牛のフライ)と呼ぶことがある[5][6]

スペインアルゼンチンメキシコ各地では食材としての睾丸を「criadillas 」と呼ぶ。中南米では口語で「huevos de toro 」(直訳で「雄牛の卵」。huevosは睾丸を指すスラングでもある)と呼ばれる。

ロッキー・マウンテン・オイスターは仔羊の睾丸を用いた「ラム・フライ」(仔羊のフライ)や「animelles」と混同されることがある。このほかにも「カウボーイ・キャビア」、「モンタナ・テンダーロイン」、「ブル・フライ」(雄牛のフライ)、「スウィンギング・ビーフ」(ブラブラする牛肉)など数多くの別名が知られている[2][7]

ロッキー・マウンテン・オイスターは元々カウボーイ文化の一部だったとされている。伝統的には、牛の放牧期間の終わりに行われるラウンドアップ(「駆り集め」、en:roundup)で大規模な去勢が行われ、大量に集められた睾丸が労働後のパーティーで食べられていた[7][8]。当時は手の込んだ調理を行わず、睾丸を皮つきのまま焼印用の炉で焼き、皮が弾けたところを「新鮮なイチジクのように」[9] 食べることが多かった[8]。現在では、この料理を看板としている料理店やバーのほか[2]、フェスティバルや牧畜を営む家庭で主に食べられている。軽食のバラエティの一つとしてロッキー・マウンテン・オイスターを販売しているクアーズ・フィールドのように、有名なイベント会場でこの料理を手軽に提供しているところもある[10]アイダホ州イーグルでは、フェスティバルの中で「ワールズ・ラージェスト・ロッキー・マウンテン・オイスター・フィード」という催しが開かれ、毎年数千人の参加者を集めている[11]

家畜の睾丸を切除する第一の目的は食用ではない。畜産において、去勢には繁殖を制限するため・骨格筋の肉質を改善するため・気性を和らげるためなど様々な意味があり、広く行われている[12]

脚注

[編集]
  1. ^ a b John Klein (2016年6月4日). “John Klein: Meet the players in Vinita's Bedlam series of calf fry frying”. Tulsa World. 2016年8月2日閲覧。
  2. ^ a b c Linda Stradley. “Rocky Mountain Oysters, How to Cook Rocky Mountain Oysters”. 2016年8月2日閲覧。
  3. ^ a b Gross or great? Unexpected delicacies from around the world”. Fox News (2012年7月23日). 2016年8月2日閲覧。
  4. ^ Leo M.L. Nollet, Fidel Toldra (2011). Handbook of Analysis of Edible Animal By-Products. CRC Press. ISBN 1439803609. https://books.google.co.jp/books?id=jyCqw-JlMh4C&dq=%22rocky+mountain+oysters%22&lr=&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 2016年8月3日閲覧。 
  5. ^ Earles, Jim (2005). “Rocky Mountain Oysters: Expanding on the List of Organ Meats”. Wise Traditions in Food, Farming and the Healing Arts (Fall). http://www.westonaprice.org/health-topics/rocky-mountain-oysters-expanding-on-the-list-of-organ-meats/ 2016年8月1日閲覧。. 
  6. ^ Pensando En Los Huevos Del Toro - Eltiempo.Com
  7. ^ a b James H. Hoy (1999). “Rocky Mountain Oyster”. In Barbara G. Shortridge, James R. Shortridge. The Taste of American Place: A Reader on Regional and Ethnic Foods. Rowman & Littlefield Publishers. pp. 37-38. ISBN 1461645786. https://books.google.co.jp/books?id=WWEeAAAAQBAJ&dq=%22rocky+mountain+oysters%22&lr=&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 2016年8月3日閲覧。 
  8. ^ a b Richard W. Slatta (2001). The Mythical West: An Encyclopedia of Legend, Lore, and Popular Culture. ABC-CLIO. pp. 240-243. ISBN 1576071510. https://books.google.co.jp/books?id=iczSBcAUC5oC&dq=%E2%80%9DMountain+oysters%E2%80%9D&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 2016年8月3日閲覧。 
  9. ^ Patricia Leigh Brown (2009年3月17日). “Delicacy of the Wild West Lives on for Those So Bold”. The New York Times. 2016年8月3日閲覧。
  10. ^ William Porter (2013年5月13日). “At Coors Field, ballpark food goes beyond the hot dog”. The Denber Post. 2016年8月2日閲覧。
  11. ^ City of Eagle (2012). Eagle. Images of America. Arcadia Pub. p. 123. ISBN 0738595373. https://books.google.co.jp/books?id=MnGpdc67HXIC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false 2016年8月2日閲覧。 
  12. ^ Matt Claeys (1996年2月). “Castration: Not Cutting Will Cut Profits”. North Carolina Cooperative Extension Service, North Carolina State University. 2016年8月2日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]