波動力学
表示
波動力学(はどうりきがく、英: wave mechanics)とは、オーストリア人の物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーによる量子力学の定式化である。波動力学において、対象となる系の状態は波動関数によって記述される。波動関数の時間変化はシュレーディンガー方程式によって与えられる。
歴史
[編集]1924年にルイ・ド・ブロイは電子の波動説[1]を唱え、電子は点状の粒子であると共に、ある種の波(物質波)を伴うと主張した。その後、1923年から1927年にかけて行われたデイヴィソン=ガーマーの実験[2]により電子線の回折が確認され、ド・ブロイの主張の通り、電子が波として振る舞うことが実証された。
1926年にエルヴィン・シュレーディンガーは一連の論文[3]で、シュレーディンガー方程式を得た。シュレーディンガーは、水素原子に束縛された電子のシュレーディンガー方程式より、ハミルトニアンの固有値としてボーアの原子模型で得られたエネルギー準位(したがってバルマー系列などの輝線スペクトル)が与えられることを示した。
シュレーディンガー方程式は、相対性理論による質量の増加や、相対論的な速度の表現を考慮に入れていない。ポール・ディラックはシュレーディンガー方程式を相対論的に拡張して、理論的にスピンの存在を導いた。
結晶や導体中の電子の挙動などを取り扱うときは、電子の速度は光に比べて十分小さいので、非相対論的なシュレーディンガー方程式が用いられる。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ de Broglie 1925.
- ^ Davisson & Germer 1928.
- ^ Schrödinger 1926, part 1–4.
参考文献
[編集]- de Broglie, Louis-Victor (1925), “Recherches sur la théorie des Quanta” (フランス語), Annales de Physique 10 (3): 22–128 2022年9月8日閲覧。
- 英訳: de Broglie, Louis-Victor (1925), “On the Theory of Quanta” (英語), Annales de Physique 10 (3): 22–128 2022年9月8日閲覧。
- Davisson, C. J.; Germer, L. H. (1928-04-01). “Reflection of Electrons by a Crystal of Nickel”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 14 (4): 317–322. Bibcode: 1928PNAS...14..317D. doi:10.1073/pnas.14.4.317. PMC 1085484. PMID 16587341 .
- Schrödinger, E. (1926-01-27). “Quantisierung als Eigenwertproblem (part 1)” (ドイツ語). Annalen der Physik 79 (4): 361-376. doi:10.1002/andp.19263840404.
- Schrödinger, E. (1926-02-23). “Quantisierung als Eigenwertproblem (part 2)” (ドイツ語). Annalen der Physik 79 (4): 489-527. doi:10.1002/andp.19263840602.
- Schrödinger, E. (1926-05-10). “Quantisierung als Eigenwertproblem (part 3)” (ドイツ語). Annalen der Physik 80 (4): 437-490. doi:10.1002/andp.19263851302.
- Schrödinger, E. (1926-06-23). “Quantisierung als Eigenwertproblem (part 4)” (ドイツ語). Annalen der Physik 81 (4): 109-139. doi:10.1002/andp.19263861802.
- 英訳:Schrödinger, E. J. F. Shearer and W. M. Deans訳 (1928) (英語), Collected papers on Wave Mechanics, Blackie and son ltd.