瀬川裕司
瀬川 裕司(せがわ ゆうじ、1957年6月 - )は、日本のドイツ文学者、映画研究・批評家、明治大学教授。
広島県出身。広島大学附属中学校・高等学校卒業、1982年東京大学文学部卒業、1985年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、1987-1988年ベルリン自由大学留学、1989年東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。同年横浜国立大学教育学部専任講師、1992年助教授、1997年明治大学理工学部助教授、1999年教授、2008年国際日本学部教授。2003-2005年ベルリン自由大学演劇研究所客員研究員。
人物
[編集]中学1年生のころから熱烈な映画ファンとなり、東京大学教養学部在学時には、蓮實重彦ゼミ(映画批評)に参加して強い影響を受ける。文学部独語独文学科に進み、大学院修士課程および博士課程ではギュンター・グラス、ペーター・ハントケといったドイツ現代作家について論文を執筆した。1987年から奨学生としてベルリン自由大学に留学し、オフ・キーノ(日本でいう名画座)文化が最後の花を咲かせていた、ドイツ再統一寸前の西ベルリン市(ベルリン)で精力的に映画を視聴し、一年半の滞在期間のうちに千本以上のドイツ映画に接した。
1989年ころから映画批評家として活動をはじめ、『海燕』『流行通信Homme』等に映画評を連載した。ヴィム・ヴェンダース、ゼーンケ・ヴォルトマン、オスカー・レーラー、ハンス・ツィシュラーをはじめとする多くのドイツ人の映画人にインタヴューしているが、1999年にはレニ・リーフェンシュタールと長時間の対話をおこない、その成果に基づいて『美の魔力 レーニ・リーフェンシュタールの真実』(2001)を発表した。同書は2002年の芸術選奨・文部科学大臣賞を受けている。1991年から批評家としてベルリン国際映画祭に参加し、ドイツ映画の最新状況についての情報を発信し続けている。2005~2008年に東京で開催されたドイツ映画祭では、総合監修をつとめた。
受賞歴
[編集]- 2001年度文化庁芸術選奨新人賞『美の魔力 レーニ・リーフェンシュタールの真実』
- 2003年フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞(ドイツ政府)
著書
[編集]- 『ナチ娯楽映画の世界』(平凡社、2000)
- 『美の魔力 レーニ・リーフェンシュタールの真実』 (パンドラ 2001)
- 『映画都市ウィーンの光芒 オーストリア映画全史』(青土社、2003)
- 『ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ 『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』『昼下りの情事』』(平凡社、2012)
- 『ビリー・ワイルダーの映画作法』(明治大学出版会〈リバティブックス〉、2012)
- 『『サウンド・オブ・ミュージック』の秘密』(平凡社新書、2015)
- 『『新しき土』の真実 戦前日本の映画輸出と狂乱の時代』(平凡社、2017)
- 『映画講義 ロマンティック・コメディ』(平凡社新書、2020)
- 『物語としてのドイツ映画史』(明治大学出版会〈リバティブックス〉、2021)
- 『『カサブランカ』 偶然が生んだ名画』(平凡社、2024)
共編
[編集]- 『ドイツ・ニューシネマを読む』(奥山賢、松山文子共編、フィルムアート社、1992)
翻訳
[編集]- レナーテ・ザイデル編『ロミー・シュナイダー 恋ひとすじに』(平凡社、1991)
- ヴィム・ヴェンダース『映像(イメージ)の論理』(三宅晶子共訳、河出書房新社、1992)
- ラインホルト・ラオ『ヴィム・ヴェンダース』(新野守広共訳、平凡社、1992)
- ヴィム・ヴェンダース『夢の視線』(河出書房新社、1994)
- ミヒャエル・ハーニッシュ『ドイツ映画の誕生』(飯田道子、平井正共訳、高科書店、1995)
- ヘルムート・カラゼク『ビリー・ワイルダー自作自伝』(文藝春秋、1996)
- ハンス・ツィシュラー『カフカ、映画に行く』(みすず書房、1998)
- ライナー・ローター『レーニ・リーフェンシュタール-美の誘惑者』(青土社、2002)
- フレート・ブライナースドルファー『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』(渡辺徳美共訳、未來社、2006)
- ダニエル・ケールマン『世界の測量 ガウスとフンボルトの物語』(三修社、2008)
- ダニエル・ケールマン『僕とカミンスキー 盲目の老画家との奇妙な旅』(三修社、2009)
- フェーリクス・メラー『映画大臣 ゲッベルスとナチ時代のドイツ映画』(水野光二、渡辺徳美、山下眞緒共訳、白水社、2009)
- ダニエル・ケールマン『名声』(三修社、2010)
- ペーター=アンドレ・アルト『カフカと映画』(白水社、2013)
論文
[編集]脚注
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