コンテンツにスキップ

土肥隆一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
土肥 隆一
どい りゅういち
生年月日 1939年2月11日
出生地 大日本帝国の旗 日本統治下朝鮮 京城府
没年月日 (2016-01-22) 2016年1月22日(76歳没)
死没地 日本の旗 日本 兵庫県神戸市
出身校 東京神学大学
東京神学大学大学院修士課程
前職 牧師
社会福祉法人理事長
衆議院議員河上民雄秘書
所属政党日本社会党→)[1]
民主改革連合→)[1]
民主党菅G横路G)→)
無所属[2]
称号 正四位
旭日重光章

選挙区旧兵庫1区→)
兵庫3区→)
比例近畿ブロック→)
兵庫3区
当選回数 7回
在任期間 1990年2月18日 - 2012年11月16日
テンプレートを表示

土肥 隆一(どい りゅういち、1939年2月11日 - 2016年1月22日)は、日本の牧師政治家衆議院議員(7期)を務めた。 世界宣教東京大会顧問[3]民主党では国のかたち研究会(通称:菅グループ)代表を務め、党倫理委員長などを歴任した。

経歴

[編集]

1939年昭和14年)、京城府(現:韓国ソウル)に出生[4]福岡県立修猷館高等学校[5]卒業、東京神学大学大学院修士課程修了。大学院修了後、日本基督教団所属の牧師として宗教活動を行う。

日本社会党所属の衆議院議員・河上民雄河上丈太郎の子)の秘書をつとめた縁で、河上の引退後に地盤を引き継ぐ。所属政党は現在までに日本社会党(1990年-1995年[1]民主改革連合1995年-1998年)、民主党1998年-2011年)。

民主改革連合では幹事長を務めた。社会党の中では右派であり、公認漏れとなった左派岡崎宏美とは総選挙で4度にわたって争った。

2011年3月、竹島領有権放棄問題により民主党を離党表明し、離党届が受理された[6]。2009年の政権交代で民主党政権が誕生して以降、民主党所属国会議員が民主党を離党したのは4人目[7]

2012年10月に民主党幹事長代行の安住淳の要請により、無所属のまま会派「民主党・無所属クラブ」に復帰[8]。同年12月の第46回衆議院議員総選挙には出馬しないことを表明し[9]、政界を引退した。

2014年4月、旭日重光章を受章。

生前は日本基督教団の現役の牧師として、理事長を務める社会福祉法人傘下の障害者支援施設「恵生園」(兵庫県朝来市)に併設された「和田山地の塩伝道所」で説教を行っていた。

2016年1月22日午後0時半、神戸市内の病院で死去[10]。76歳没。歿後に正四位追叙[11]

人物

[編集]

近隣諸国のために活動

[編集]

キリスト教議員として

[編集]

民主党の「憲法提言中間報告」が、将来の日本の国のかたちとして「一神教的な唯一の正義を振りかざすのではなく、多様性を受容する文化という点においては、日本社会に根付いた多神教的な価値観を大いに生かすことができる」と明記したことに対して、「こんなことを憲法論議の前提にすることは許されない。」と抗議して、撤回削除をさせた[12]

選択的夫婦別姓制度

[編集]

選択的夫婦別姓制度導入に賛同する[13]

近隣諸国への取り組み

[編集]

政治信条について「私はいつも韓国に負い目を感じている。そして、韓国社会のために何か貢献しなければならない、特に、日本の政府、日本国民が韓国民に対して何をなすべきか、何をなさないでいるのかを常に考えてきた。」としている[14]

朝鮮学校無償化
  • 外国人学校に対するいわゆる「差別」撤廃に古くから取り組んでおり、2003年には、神戸朝鮮高級学校の校長および神戸中華同文学校の校長とともに「外国人学校への差別撤廃と受験資格付与に関する公正な判断を促す要望書」を文部科学省に提出している[15]
  • 朝鮮学校の無償化に関しては、2010年3月19日に参議院議員会館で開かれた「高校実質無償化における朝鮮学校の取り扱いに関する勉強会」において、「日本社会に生活基盤を置く在日朝鮮人が民族のアイデンティティを求めて民族教育を行うことは当然のこと」であり[16]、「省令にまかせて闇の中で排斥[16]」されようとしているが、「良心的力学が働いて朝鮮学校にも当然無償化の手が差し伸べられると確信している」[16]と発言している。また、2010年4月29日に神戸朝鮮高級学校で開かれた公開授業を訪れた際には、「民族が違えばそれに合った民族教育が必要なのは当然のこと[17]」「アイデンティティーを求める民族教育は反日的なものではない。民族教育を受け止める社会作りが必要[17]」と主張している。
  • 朝日新聞の「永住外国人の地方参政権」に関する質問に「賛成」と回答している。
韓国関連
  • 2001年(平成13年)4月11日、「日本は反省しる!」のプラカードを持ちながら国会議事堂前で座り込む金泳鎮議員会館の横に移動するよう促し、その場面を翌日の東亜日報が報道した。
  • 2007年平成19年)8月14日、日韓キリスト教議員連盟の日本側代表として「2007釜山板門店平壌(PPP)十字架大行進」に参加し、「日本人は天皇を現人神とする偶像崇拝の罪を犯し、韓国人にも偶像崇拝を強要しただけでなく、植民地占領地に神社神宮を立て参拝を強要した。過去を振り返り、われわれ日本人が犯した罪を主の名の下に告白し、謝罪する」と日本人への許しを請うが、韓国の金泳鎮農林部長官らは「許しは被害者が加害者に与えられる最高の贈り物。祖先が受けた苦痛の記憶を忘れてはならないが、われわれがキリストの十字架精神をみせるとき、韓国と日本は本当に近い国になれるだろう」と述べるにとどまった[18]
  • 2009年11月28日、日韓キリスト教議員連盟の日本側会長として、韓国側会長の民主党・金泳鎮議員と共に韓国の国会で記者会見し、「バラク・オバマ米大統領が日本訪問の際、天皇に丁寧なお辞儀をしたのは、日本の右傾化を助長し、韓国及び東アジアの国民に苦痛を与えた行動である」と述べた。更に、「オバマ大統領はこの行為を謝罪し、立場を表明しなければならない」として、日韓両国議員連名でオバマ大統領に公開書簡を送ることを発表した[19]
  • 2010年8月19日、日韓併合100年を契機に「植民地支配過程で被害にあった韓国人とその子孫たちに対して日本政府の十分な賠償を促す」ことを目的とした「韓日過去史の解決と未来に向けた平和議員会議」に民主党の斎藤勁衆議院議員・首藤信彦衆議院議員・相原久美子参院議員・今野東参院議員・那谷屋正義参院議員、日本共産党山下芳生参院議員、社民党阿部知子衆議院議員、社民党党首の福島瑞穂参議院議員、無所属の糸数慶子参議院議員らと出席し、自民党の加藤紘一衆議院議員の代理人も参加し、韓国の国会議員らとともに日本による韓国併合の違法性、戦後補償と慰安婦問題、在日韓国人の地方参政権問題などの解決方法について議論した[20][21]。その議論で土肥衆院議員は「20年間、国会議員をやっているが、果たして国会議員が継続して歴史問題、日韓の重荷をともに考える人材足りえるかとの疑問を持っている。さりとて、政治が解決しなければならない。これまでの日韓国会議員連盟は50年以上、何をやってきたのか。歴史的使命を果たしていない。そこをどう認識し、交流し、和解するのか。和解では日本人だけが一方的に「お許しください」というのではなく、韓国側も同じく和解しようという意思でやるべきだ。」と総括した[22]
  • 2011年2月25日、衆議院第1議員会館で今野東石毛鍈子阿部知子笠井亮らと、韓国の国会人権フォーラム代表の黄祐呂議員らと協議会を開催。被害を受けたとする韓国人原告の側に立ち日本政府に責任を問う訴訟を行ってきた高木健一弁護士が主導したサハリン残留韓国人の補償と支援に向け、日韓の企業と政府が一定の基金を出し合い、財団を設立する案に合意した[23][24]
  • 2011年(平成23年)2月27日、日韓キリスト教議員連盟の日本側会長として、竹島領有権の放棄を日本側に求める下記の「日韓共同宣言」に署名し、韓国の国会で韓国の議員らと記者会見を行った。

「竹島領有権主張問題 共同宣言文の骨子」[25][26]

一、日本は恥ずかしい過去に対し、歴史の真相を糾明し、日本軍慰安婦、サハリン強制徴用被害者など、歴史の被害者に対する妥当な賠償措置を履行しなければならない。両国の善隣関係は、真実の謝罪と賠償が出発点となる。

一、日本は、平和憲法改正と軍国主義復活の試みを直ちに中断しなければならない。
一、日本政府は歴史教科書歪曲と独島(注、竹島の韓国名)の領有権主張により、後世に誤った歴史を教え、平和を損なおうとする試みを直ちに中断しなければならない。

3月9日になってこの事実は明らかになり、問題化した。土肥は第一報を報じた産経新聞の取材に対し「個人的には、竹島は日本の領土とは一概にはいえないのではと思っている[27]」と語った。9日夜の首相ぶらさがり会見で、菅首相は土肥の行動に対し、「大変遺憾[28]」と語った。土肥はマスコミ各社のインタビューを受けたが「個人的には竹島は日本の領土とは一概には言えないと思っている。日韓両国が互いに自国の領土と主張すれば、問題はいつまでも解決しない(朝日新聞)[29]」、「(竹島は)政治的には日本の領土だが、話し合いはすべきだ(時事通信[30]」、「竹島は日本の領土との認識に変わりはないが、日韓双方の主張があり、韓国側の主張にも納得できる部分もある(読売新聞)」、「(竹島に関してはどのように?)それはもう、日本の領土ですよ。あの文章はやっぱりね、今読み直してみても、相当一方的だなということは感じるけれども。その場にのまれたっちゃあ、のまれたし。こんなにマスコミに取り上げられるとは思ってもみなかったからね。まぁ、うかつでした(FNN[31]」等の発言を行っている[32]。この問題で2011年3月14日離党届けを出し、翌15日承認された[33]

思想

[編集]
  • 日本でキリスト教が伸びない理由について「日本にはいろいろな神々がいます。1つの神を選べないのです。日本でキリスト教が伸びないのは、1つの神を拝んだことがないためです。それが分からない。そして頑なに伝統的生き方、考え方を変えない。つまり今までどおりの生き方を変えない、頑固な民族なのです。」と分析している[34]
  • 神道については「神社神道はある種、自然宗教的つまり「神論」を持たない形式だけの宗教ですが、仲保者(神と人との仲介者、イエス・キリスト)がいません。あらゆる宗教つまり一神教・自然宗教・汎神論的世界に抵抗できるとすれば、一神教でありながらイエス・キリストを頂くキリスト教をおいてほかにないと思います」と述べている[35]

交流

[編集]

主な所属団体・議員連盟

[編集]

選挙歴

[編集]
当落 選挙 施行年 選挙区 政党 得票数 得票順位 比例代表
第39回衆議院議員総選挙 1990年 旧兵庫1区 日本社会党 121,436 9人中1位
第40回衆議院議員総選挙 1993年 旧兵庫1区 日本社会党 82,876 11人中3位
第41回衆議院議員総選挙 1996年 兵庫3区 民主改革連合 57,368 5人中1位
第42回衆議院議員総選挙 2000年 兵庫3区 民主党 66,547 5人中1位
第43回衆議院議員総選挙 2003年 兵庫3区 民主党 88,767 3人中1位
当(比) 第44回衆議院議員総選挙 2005年 兵庫3区 民主党 87,182 3人中2位 比例近畿ブロック
第45回衆議院議員総選挙 2009年 兵庫3区 民主党 102,350 6人中1位
当選回数7回 (衆議院議員7)

脚注

[編集]
  1. ^ a b c 国会議員白書/土肥隆一 - 政治学者菅原琢が運営するサイト - 2011-03-09閲覧。
  2. ^ “土肥隆一氏が死去 76歳 元衆院議員”. 神戸新聞NEXT (神戸新聞社). (2016年1月26日). http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201601/0008752068.shtml 2016年7月14日閲覧。 
  3. ^ エジンバラ100周年記念世界宣教会議・東京大会実行委員会]
  4. ^ “(2)「宣言撤回を申し入れたが…」”. MSN産経ニュース (産経新聞社): p. 1. (2011年3月10日). https://web.archive.org/web/20110312034555/http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110310/stt11031023220012-n1.htm 2011年3月11日閲覧。 
  5. ^ 東京修猷会 第488回二木会(2001年10月11日(木))
  6. ^ 読売新聞2011年3月16日13版9面
  7. ^ 2010年2月の石川知裕、同年9月の中島正純、2011年3月の佐藤夕子の例があった(ただし、佐藤は離党届は党幹事長預かりとなり、受理されたのは2011年5月)。
  8. ^ “土肥隆一議員 民主会派に復帰 NHKニュース”. Social News CERON (クリエ14). (2012年10月16日). http://ceron.jp/url/www3.nhk.or.jp/news/html/20121016/k10015781281000.html 2016年7月14日閲覧。 
  9. ^ 藤井裕久氏、政界引退へ…土肥隆一氏も不出馬 : ニュース : 衆院選2012 : 衆院選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
  10. ^ 土肥隆一氏死去(元民主党衆院議員) : 時事ドットコム(時事通信) 時事通信 2016年1月26日
  11. ^ 官報』第6722号(平成28年2月25日付)9頁
  12. ^ クリスチャン新聞2004年11月21日号 [1]
  13. ^ mネット、2004年2月 国会議員への民法改正に関するアンケート
  14. ^ 産経新聞 2011.3.10 23:18 【土肥氏会見詳報】(2)「宣言撤回を申し入れたが…」(2/3ページ)[2]
  15. ^ “〈大学受験資格問題〉 神戸朝高校長、中華同文校長と共に文科省に要請”. 朝鮮新報. (2003年3月27日). http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2003/j02/0302j0327-00006.htm 2011年3月10日閲覧。 
  16. ^ a b c “「高校無償化」 院内勉強会 「排外主義、差別意識の克服を」”. 朝鮮新報. (2010年3月24日). http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/03/1003j0324-00004.htm 2011年3月10日閲覧。 
  17. ^ a b “神戸朝高で公開授業 日本市民ら80人が訪問”. 朝鮮新報. (2010年5月17日). http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/03/1003j0517-00001.htm 2011年3月10日閲覧。 
  18. ^ 日本の土肥隆一議員ら、過去史に対する謝罪文発表”. 聯合ニュース (2007年8月14日). 2010年9月14日閲覧。
  19. ^ “キムヨンジン議員、日本の国会議員・土肥隆一議員と共同で、オバマ大統領に謝罪を要求”. 東亜日報. (2009年11月29日). http://news.donga.com/3/all/20091129/24453043/1 2011年3月12日閲覧。 
  20. ^ 聯合ニュース 韓国国会議員、日本側に慰安婦問題などの議論要求
  21. ^ 中央日報 - 韓日議員40人「日本は植民地支配の被害賠償せよ」
  22. ^ 「菅談話、まだ足りない」「慰安婦、サハリンの謝罪必要」… 日韓国会議員会議詳報 (1/3ページ) - MSN産経ニュース [3]
  23. ^ 韓国新聞・政治-韓日国会議員、東京でサハリン残留韓国人問題を論議 /wowkorea.jp [4]
  24. ^ 強制徴用被害者への補償、韓日官民の共同解決を推進(聯合ニュース)[5]
  25. ^ 竹島領有権主張問題 共同宣言文の骨子”. 産経デジタル. 2011年3月11日閲覧。
  26. ^ 竹島領有権主張問題 共同宣言文の骨子”. MSN産経ニュース. 2011年3月11日閲覧。
  27. ^ 民主・土肥氏「竹島領有権、日本は主張中止を」韓国議員と共同宣言 会見まで 先月末
  28. ^ 竹島巡る議員行動「遺憾」首相、竹島問題で
  29. ^ 日本の竹島領有権主張中止求める宣言、民主・土肥氏賛同
  30. ^ 民主・土肥氏、竹島放棄要求の会見に出席=菅首相「大変遺憾」
  31. ^ 竹島めぐる共同宣言署名の民主・土肥議員「韓国が出したいと言うからいいだろうと」
  32. ^ 民主・渡辺周氏「土肥氏は公の場で説明を」 竹島領有権否定問題
  33. ^ 土肥氏離党を承認=民主”. 時事通信 (2011年3月15日). 2011年3月17日閲覧。
  34. ^ み声新聞2005年11月27日号(第339号)掲載 [6]
  35. ^ み声新聞2005年12月4日号(第340号)掲載 [7]
  36. ^ 12月9日(土)羽田雄一郎君結婚、六本木合唱団、地元後援会忘年会江田五月 活動日誌 2000年12月。2020年12月30日閲覧。
  37. ^ 民主・東アジア議連発足 土肥、山口氏が役員に”. 神戸新聞. 2011年3月11日閲覧。

関連項目

[編集]
  • 金泳鎭 - 元韓国国会議員。2004年の国会議員選挙落選後も、日韓キリスト教議員連盟の韓国側代表である。

外部リンク

[編集]
議会
先代
中野寛成
日本の旗 衆議院外務委員長
2001年
次代
吉田公一
先代
高木義明
日本の旗衆議院石炭対策特別委員長
1999年 - 2000年
次代
東祥三